中村功「通信メディア」東京大学社会情報研究所編『日本人の情報行動2000』東京大学出版会
 近年携帯電話の急速な普及をはじめとして、電子メールや携帯メールなど新たな通信メディアが盛んに使われるようになってきた。ここでは固定電話、携帯電話(PHS)、ファックス、電子メール、携帯メールなどの通信メディアについて、利用状況を検討する。
2.3.1 ビジネスマンの集中的利用と主婦にひろく利用される電話
 固定電話(以下本節では「電話」と表現)の1日あたりの平均利用時間(全体)は6.1分、行為者平均は41.2分である。これは日記式調査で10分以上行った情報行動についてのみ計算したものである。電話は3分以内のことが多いので、多くの通話がこの方式では記録されず、全体平均は短く、行為者平均は実際より長く出ている。一方、1日を4分割し
 
     表2.3.1 属性別電話利用時間・回数・行為者率 ('00日記式調査)
        利用時間(全体) 利用時間(行為者) 回数(全体)  行為者率+ 
性別 男性     4.9b     48.4a     6.3a     63.1b 
   女性     7.1a *    37.9b **    4.6b**    73.0a***     
年齢 10代     6.4ab    50.7      1.6d     49.4c 
   20代     3.9b     33.5      4.1c     53.4c 
   30代     8.3a     46.8      6.1b     73.9ab 
   40代     5.4ab    39.5      7.9a     76.7a 
   50代     7.1ab    40.5      6.2b     74.8ab 
   60代     4.9b *    35.5 ns.    4.2c***    71.3b***
職業 フルタイム     5.6     44.0      7.9a     68.4b 
   パート    6.2     34.3      3.5b     71.0b 
   専業主婦   8.8     37.9      3.8b     84.1a 
   学生・生徒   5.9     51.8      1.4c     47.3c 
   無職     3.6 ns.   39.4 ns.    2.8bc***   65.8b***
 全体       6.1     41.2      5.3      68.4  
(+行為者率は回数をもとに算出。回数は未記入欄に0を代入して算出)
(分散分析の結果:***p<0.001 **p<0.01 *p<0.05)
(数字右肩のa,b,cは同記号間ではDUNCAN法によりp<0.05の有意差がないことを示す)
 
て利用回数をたずねているが、こちらは短い通話も記録できる。本節における行為者率はこの回数をもとにしている。それによると、固定電話の1日あたりの平均利用回数は5.3回で、1日あたりの行為者率は68.4%であった。
 男女別では、男性のほうが利用回数、ならびに行為者の利用時間が女性を上回っている。しかし女性の行為者率が73.0%と高くなっているために、全体平均利用時間は女性のほうが長い。男性は使う人が集中的によく利用する反面、女性は広く薄く利用していることになる。この集中と拡散の傾向は職業別に見るとより鮮明になる。すなわちフルタイムで働いている人の行為者率は68.4%とそれほど高くないが、利用回数は7.9回と極めて高い。その一方専業主婦は回数は3.8回と多くないが、行為者率が84.15%と高いために、全体の利用時間も8.8分と長くなっている。このことから、電話は一部の人が仕事で高度に利用する一方、主婦は幅広く(すなわち多くの人が毎日のように)利用していることがわかる。一方10代、20代の若者は固定電話をあまり利用していない。行為者率、回数、利用時間など各指標で他の年代を下まわっている。この傾向は95年調査の時も見られたものである。
 
    表2.3.2 電話利用時間・回数・行為者率時系列比較 
        利用時間(全体)         95年 00年 差利用時間(行為者) 95年 00年 差 回数(全体)
95年 00年 差
  行為者率+
95年 00年 差
性別 男性    9.0 5.3 -3.7
   女性    9.8 7.2 -2.6
66.1 51.1 -15.0
43.7 38.1 -5.6
7.1 6.7 -0.4
4.9 4.6 -0.3
67.8 62.2 -5.6
78.3 72.6 -4.7
年齢 10代    5.9 6.4 0.5
   20代    8.5 3.9 -4.6
   30代    7.8 8.3 0.5
   40代   13.4 5.4 -8.0
   50代   10.5 7.1 -3.4
44.2 50.7 6.5
38.6 33.5 -5.1
45.7 46.8 1.1
60.9 39.5 -21.4
60.2 40.5 -19.7
1.7 1.6 -0.1
5.2 4.1 -1.1
7.0 6.1 -0.9
7.5 7.9 0.4
6.3 6.2 -0.1
52.7 49.4 -3.3
71.6 53.4 -18.2
81.1 73.9 -7.2
79.6 76.7 -2.9
75.7 74.8 -0.9
職業 フルタイム   9.1 5.6 -3.5
   パート  12.6 6.7 -5.9
   専業主婦 10.9 9.0 -1.9
   学生・生徒 6.7 5.9 -0.8
   無職    8.9 5.9 -3.0
52.7 44.7 -8.0
60.7 35.7 -2.5
39.7 37.4 -2.3
47.0 51.8 4.8
73.1 51.8 -21.3
8.7 8.1 -0.6
4.0 3.5 -0.5
3.4 3.7 0.3
1.5 1.4 -0.1
2.1 2.3 0.2
76.9 68.5 -8.4
80.1 71.0 -9.1
78.5 85.2 6.7
54.1 47.3 -6.8
66.7 60.4 -6.3
 全体      9.5 6.3 -3.250.8 42.2 -8.6 5.9 5.6 -0.373.8 67.9 -5.9
(+行為者率は回数をもとに算出。2000年は60代を削除、95年は'00年方式で再計算1))
 
 また時系列で95年調査と比較すると、行為者率が73.8%から67.9%、行為者利用時間も50.8分から42.2分と下がっており、全体として電話が利用されなくなっている傾向が見える。回数、行為者率で言うと、特に20代・30代や勤労者層の落ち込みが大きい。この層は、次に述べるように、携帯電話をよく利用する層であり、携帯電話へのシフトが利用低下の一因であろう。
 
2.3.2 急伸する携帯電話利用
(1)20代及び常勤者の活発な利用
 携帯電話・PHS(以下本節では両者をあわせて「携帯電話」と表現)は1995年以降急激に普及し、2000年には6000万加入を越え、国民の2人に1人が所有する時代になった。携帯電話の普及率を「家にあって自分も利用している」という質問でたずねたところ、全体で51.3%の普及率であった。この数字は全国的な加入者統計とほぼ一致している。2000年は60歳代を削除して、時系列比較してみると、携帯電話の個人所有率が4.2%から57.1パーセントに劇的にあがっていることがわかる。これを属性別に見ると95年時には40代の利用が多かったが、今回は20代が最も多くなり、若者メディアとしての特徴が現れてきた。その一方ポケベルは95年には9.8パーセントの人が利用していたが、2000年には2.2%となり、性、年齢、職業別に見ても全体的に利用が落ちている。
 
 
表2.3.3 属性別通信メディア所有率    表2.3.4 通信メディア所有率時系列比較
       ポケベル 携帯電話         ポケベル    携帯電話   
性別男性    2.7    60.1           95 00 差  95 00  差  
  女性    1.6 ns.  43.8**   性別男性   13.8 2.9 -10.9 5.6 67.1 61.5 
年齢10代    2.2    43.9      女性   6.8 1.6 -5.2 3.1 49.0 45.9 
  20代    1.0    86.0    年齢10代   5.4 2.2 -3.2 0.7 43.9 43.2    30代    2.4    62.5      20代   16.0 1.0 -15.0 4.2 86.0 81.8 
  40代    1.9    57.3      30代   10.5 2.4 -8.1 3.2 62.5 59.3 
  50代    3.0    40.0      40代   9.7 1.9 -7.8 7.3 57.3 50.0 
  60代    1.6 ns.  18.8**     50代   6.8 3.0 -3.8 4.5 40.0 35.5 
職業フルタイム   2.6    65.8    職業フルタイム  14.5 2.6 -11.9 6.5 69.6 63.1 
  パート   1.3    41.5      パート  6.9 1.6 -5.3 1.4 45.6 44.2 
  専業主婦  1.8    29.3      専業主婦 1.9 1.5 -0.4 3.1 35.4 32.3 
  学生・生徒 2.3    50.8      学生・生徒 5.1 2.3 -2.8 0.6 50.8 50.2 
  無職    0 ns.  27.0**     無職   9.4 0 -9.4 3.0 44.7 41.7 
  全体    2.1    51.3      全体   9.8 2.2 -7.6 4.2 57.1 52.9 
(χ2検定**:P<.01 * p<.05 ns.p>.05)           ('00年は60代を削除)
 
 携帯電話所有率を属性別に見ると、男女別では男性60.1%、女性43.8%と男性が女性を上回っている。これは専業主婦が29.3%と特に低くなっていることが影響している。専業主婦は家庭にいることが多いために、多くの場合固定電話で用がたりるのであろう。それに対してフルタイムで働いている人の利用率は65.8%と極めて高い。年齢では20歳代が86.0%と極めて高くなっている一方で、60代は18.8%と低い。また、携帯電話をよく使っていると思われる10代は43.9%とそれほど高くなかった。著者が同時期に大学で行った調査では9割以上の学生が携帯電話かPHSを利用しており、これと比べると大きな差がある。これは、今回の調査対象に中学生・高校生が多く含まれているためである。若者を年齢別に詳しく見ると、携帯電話所有率は13-15歳(中学レベル)で15.3%、16-18歳(高校レベル)で55.8%、19-22歳(大学レベル)で91.5%であった。若者に普及しているといっても、ロー・ティーンエイジャーの所有率はまだそれほど高くないのである。このように見ると携帯電話はフルタイムで働くビジネスマンと、20代の若者の所有率が高いといえる。
 次に利用様態をみると、20代の若者とフルタイムで働く人の利用率が高くなっている。例えば1日あたりの行為者率は20代で62.8%と他のカテゴリーより圧倒的に高くなっている。ついで30代、40代といった中年層もそれぞれ39.4%、37.1%と高い。また職業ではフルタイムが44.1%、学生生徒が37.4%と他の職業よりも高くなっている。同様の傾向は利用回数にも当てはまり、携帯電話は20代の若者とビジネスマンに頻繁に使われるメディアであるといえるだろう。ただ利用時間となると20代と同様に10代も高くなる。全体の利用時間では20代が5.8分、10代が3.8分なのに対し、行為者平均利用時間では10代が70.8分と最も多くなっている。ティーンエイジャーは行為者率や利用回数は多くないものの、携帯電話で長電話をする傾向があるといえる。
 
 表2.3.5 属性別携帯電話利用時間・回数・行為者率 ('00日記式調査より)
        利用時間(全体) 利用時間(行為者) 回数(全体)  行為者率+ 
性別 男性      2.9a      53.9a      3.0a     41.1a 
   女性      1.5b*     36.7b*     1.3b***   26.2b***
年齢 10代      3.8ab     70.8      2.5b     32.3c 
   20代      5.8a     41.0      4.0a     62.8a 
   30代      2.2bc     47.1      2.7b     39.4b 
   40代      1.0c     35.5      2.1bc    37.1b 
   50代      0.9c     44.2      1.3cd    21.6d 
   60代      0.5c*     47.5ns.     0.5d***   8.9e***
職業 フルタイム     2.9a     49.9      3.2a     44.1a 
   パート     1.8ab     39.1      1.1a     24.6c 
   専業主婦    0.1b     18.0      0.4b     14.3d 
   学生・生徒   1.8ab     31.0      2.3a     37.4b 
   無職      2.8a*     76.4ns.     0.7b***   13.4d***
 全体        2.1      46.0      2.1     33.0  
(+行為者率は回数をもとに算出。回数は未記入欄に0を代入して算出。)
(分散分析の結果:***p<0.001 **p<0.01 *p<0.05)
(数字右肩のa,b,cは同記号間ではDUNCAN法によりp<0.05の有意差がないことを示す)
 
(2)よく会う人との私的連絡に使われる携帯電話−携帯電話・PHS利用者調査より−
 では携帯電話では、誰とどのような内容を話し、利用者にどのような影響を及ぼしているのだろうか。全体調査で携帯電話(PHS)を利用していると回答した人から、無作為に選んだ413人を対象にした調査(携帯電話・PHS利用者調査)からみてみよう。
       図2.3.1 携帯電話(音声利用)利用頻度 ('00携帯利用者調査)
 
 まず利用頻度を私的なものと仕事のものに分けて聞いてみると、圧倒的に私的な利用が多くなっている。そして、私的利用の頻度も1日数回以上が3割、一日1,2回が3割とかなり頻繁になっている。現在では、携帯電話は私的領域でよく使われることが基本であるといえる。
 
 
  図2.3.2 携帯電話(音声利用)の利用相手(複数回答)('00携帯利用者調査)
 次に、通話の相手だが、同居の家族(62.2%)やよく会う友人(55.4%)など、日常よく会う、親しい人たちとの通話が多くなっている。同居の家族が多くなっているのは、広い年齢層が対象のこの調査の特徴であるともいえるが(一般に若者対象の調査ではそれほど多くない)、移動中に携帯電話から家庭に「帰るコール」をするなど、携帯電話利用の特徴によるものでもあろう。
 よく話す通話内容としては、待ち合わせの約束や連絡(68.0%)や帰宅の連絡(42.6%)など、道具的な連絡が多い。また相手や自分の居場所の確認といった内容は、携帯電話ならではのものといえる。一方われわれは街頭で携帯電話で長電話をする若者をよく見かけるが、意外なことに、特に用件のないおしゃべりをする利用者は18.2%と、少数派であった。携帯電話は通話料金が高いことや、音声が安定しないことなどがその原因と考えられる。
 
      図2.3.3 携帯電話(音声利用)の内容  ('00携帯利用者調査)
 
  次に、携帯電話がもたらす影響だが、日常生活への影響は、影響レベルと影響のメカニズムによって整理することができる。すなわち、影響レベルとしては意識面、行動面、関係性、規範の各レベルがある。メカニズムでは、簡便化(手近にあるため簡単に電話ができる)、直接性(直接本人と話せる)、常態化(いつでも電話ができる)、そしてその他の特徴(時計機能、メモリー機能、発信番号表示機能、着信音の多様性、加入・解約の容易さ)があげられる。両者の組み合わせから様々な影響が想定できるが、それらが実際に起こっているかはデータによって明らかにする必要がある(詳しくは中村(2001)を参照)。
 今回の利用者調査で、最も大きな影響が確認されたのは「いつでも連絡がとれる安心感もてるようになった」(76.0%)であった。これは携帯電話の常態化の作用による意識面の変化である。「常に持ち歩いていないと不安を感じるようになった」(32.2%)という意識も同じ側面の作用を意味している。あるいは「連絡がつかずいらいらすることが減った」(30.3%)は常態化によるストレスの減少を意味している。あるいは「自分の好きなストラップやシールなどをつけている」(34.9%)や「着信音を自分の好きなものに変えている」(48.4%) は電話がファッション化してきたことを表しているが、これも意識面の変化である。
 一方行動面では「小さな用件でも連絡することが多くなった」(33.2%)「遊びの予定な
 
  表2.3.6 携帯電話の影響 ('00携帯利用者調査)


意識面





 
1)連絡がつかずいらいらすることが減った             30.3
2)連絡がつかずいらいらすることが増えた             6.1
3)行動が自由になった                      14.0
4)束縛されているという感じが強くなった             10.9
5)頻繁に電話がかかってくるのがうるさいと感じるようになった   6.1
6)出たくないときにもかかってくるので迷惑だと感じるようになった 13.8
7)もつことで家族が安心するようになった             34.4
8)いつでも連絡がとれるという安心感をもてるようになった     76.0
9)常に持ち歩いていないと不安を感じるようになった        32.2
10)自分の好きなストラップやシールなどをつけている        34.9
11)着信音を自分の好きなものに変えている             48.4

行動面


 
12)電話代がかさむようになった                  48.9
13)友達と会う回数が増えた                    15.5
14)深夜・夜間に人と連絡を取ることが増えた            28.3
15)小さな用件でも連絡することが多くなった            33.2
16)時間を有効に使えるようになった                23.0
17)遊びの予定など直前に決定することが多くなった         30.8
18)ダイヤル登録をアドレス帳代わりにしている。          48.4
関係性19)携帯電話・PHSをもっている友達との結びつきが強くなった   18.9
20)さっきあったばかりなのに友人や恋人と携帯電話でだらだら
  おしゃべりすることがある                   6.3




















 
                  (文字囲いは回答率が3割以上の項目)
ど直前に決定することが多くなった」(30.8%)があるが、これは直接化や常態化の作用に
よっている。また「ダイヤル登録をアドレス帳代わりにしている」(48.4)%は携帯電話の
その他機能によるものである。
 このように意識面・行動面の変化はかなり確認されたが、それに比べると人間関係面の変化は少ないようだ。友人関係の強化や、一日中コンタクトを取り合うような新たな関係性(フルタイム・インティメイト・コミュニティー、吉井ら1999)はあまり広がっていないようである。
2.3.3 ビジネス用の書字メディア
 ファックスの家庭普及率は42.2%とかなり普及しており、「自分で利用する」という人も32.7%と全体の1/3に上っている。しかし1日あたりの利用率は13.4%で、利用回数は0.6回である。この数字は職場での利用も入っているが、ファックスは普及している割には、利用頻度の低いメディアであるようだ。
 利用を属性別に見ると、最もよく利用しているのは行為者率22.2%利用回数1.1回のフルタイムで働いている人である。また性別では男性(18.3%)が多く、年齢別では30代から50代の中年層の利用が多かった。逆に10代や学生で利用が低い。こうしたことから、ファックスは主として中年男性が仕事で使う、「ビジネス・メディア」としての性格を強く持っている、といえそうだ。
 一方同じ書字メディアである手紙だが、送信と受信を合わせると行為者率は46.9%平均回数は1.3回であった。その多くは、請求書やダイレクトメールなど事務的な手紙であろ
    
表2.3.7 属性別郵便・FAX送受回数・行為者率 ('00日記式調査)
           郵便        FAX  
        回数  行為者率  回数  行為者率
性別 男性   1.4   44.2b    0.9a  18.3a    
   女性   1.3ns. 49.1a*   0.4b*** 9.3b***   
年齢 10代   0.4c  21.9c    0.1d   3.0c    
   20代   0.8b  37.8b    0.6ab  10.8b    
   30代   1.5a  53.2a    0.8ab  17.8a    
   40代   1.7a  52.7a    1.0a  19.8a    
   50代   1.7a  52.9a    0.6ab  16.7a    
   60代   1.4a*** 51.0a***  0.3bc*** 6.3c***   
職業 フルタイム   1.6a  49.5b    1.1a  22.1a    
   パート  1.2a  44.8b    0.3b   9.0b    
   専業主婦 1.5a  59.3a    0.1b   5.6bc   
   学生・生徒 0.5b  24.1c    0.04b  2.5c    
   無職   1.2b*** 45.6b***  0.03b*** 2.0c***  
  全体     1.3   46.9    0.6   13.4    
(行為者率は回数をもとに、未記入欄に0を代入して算出)
(分散分析の結果:***p<0.001 **p<0.01 *p<0.05)
(数字右肩のa,b,cは同記号間ではDUNCAN法によりp<0.05の有意差がないことを示す)
表2.3.7 属性別電子メール送受回数・  表2.3.8 電子メール送受回数・行為者率
            行為者率                 時系列比較
       回数(全体) 行為者率+         回数(全体)  行為者率+  
性別 男性   2.1a   18.3a          95  00  差  95 00 差 
   女性   1.2b**  11.0b*** 性別 男性   0.2 2.5 2.4 3.3 21.1 18.8
年齢 10代   3.4a   18.6b      女性   0.0 1.4 1.4 1.3 12.7 11.4
   20代   3.2a   31.2a   年齢 10代   0  3.4 3.4 0  18.6 18.6
   30代   1.6b   17.5b     20代   0.1 3.2 3.1 2.9 31.2 28.3
   40代   1.4bc   12.6c     30代   0.1 1.6 1.5 3.0 17.5 14.5
   50代   0.8bc   7.8d      40代   0.1 1.4 1.3 2.5 12.6 10.1
   60代   0.2c***  2.4e***    50代   0.1 0.8 0.7 1.6 7.8  6.2
職業 フルタイム   1.9b   17.6b   職業 フルタイム   0.2 2.0 1.8 3.7 19.1 15.4
   パート  0.6bc   9.2c      パート  0.0 0.6 0.6 1.7 10.0  8.3
   専業主婦 0.4c    5.7c      専業主婦 0  0.5 0.5 0  7.3  7.3
   学生・生徒 4.3a   23.9a     学生・生徒 0  4.3 4.3 0  23.9 23.9
   無職   0.3c***  6.0c***     無職   0  0.9 0.9 0  12.5 12.5
 全体     1.6    14.3    全体     0.1 1.9 1.8 2.1 16.5 14.4
(+行為者率は回数をもとに算出)  ('00年は60代削除、95年は'00方式で再計算1))
(分散分析の結果:***p<0.001 **p<0.01 *p<0.05)
(数字右肩のa,b,cは同記号間ではDUNCAN法
によりp<0.05の有意差がないことを示す)
   表2.3.8 属性別携帯メール・インターネット利用時間
  利用時間(全体) 利用時間(行為者)行為者率(10分以上)
性別 男性
   女性
   0.2
   0.7 ns
   25.0
   52.0 ns.
   0.6
   1.4 ns.
年齢 10代
   20代
   30代
   40代
   50代
   60代
   2.3a
   1.0b
   0.2b
    0b
   0.1b
    0b **
   70.0
   32.5
   25.7
    -
   22.5
    - ns.
   3.2a
   3.1a
   0.9b
    0b
   0.2b
    0b ***
職業 フルタイム
   パート
   専業主婦
   学生・生徒
   無職
   0.3b
   0.1b
   0.0b
   2.1a
   0.6b **
   29.1
   30.0
   15.0
   67.5
   36.0 ns.
   0.9bc
   0.5bc
   0.2c
   3.0a
   1.7b ***
  全体   0.5   44.3   1.0
(行為者率は利用時間にもとづく)(分散分析の結果:***p<0.001 **p<0.01 *p<0.05)
(数字右肩のa,b,cは同記号間ではDUNCAN法によりp<0.05の有意差がないことを示す)
 
が4.3回と突出している。電子メール利用において、今では若者層が主役となってきたようである。
 この一因は若者が携帯電話単体を利用して電子メールや文字メッセージを盛んにやりとりするようになったことにある。とくに1999年2月にサービスを開始したNTTドコモのiモードは2000年8月には1000万加入を越え、爆発的にヒットした。 
 携帯メールについて詳しくは第二部で述べるが、今回の日記式調査では10分以上の利用行動(主行動)に限って、携帯メール・インターネットについてたずねている。それによると、10代の1日あたり平均の行為者率は3.2%、20代が3.2%と、若者層は他年代に比べて明らかに高くなっている。また職業別では学生が3.0%と有意に高かった。こうした携帯メールは電子メールのあり方に大きな変化を与えようとしている。
 
2.3.5 生活時間と通信メディア利用
 ところで、どのような時間帯にどのような人が電話をかけるのだろうか。携帯電話の登場で電話をかける時間帯は異なっているのだろうか。日記式調査では、午前(6-12)、午後
                     図2.3.4 時間帯別利用率 (回数ベース、'00日記式調査)
 
(12-18)、夜(18-24)、深夜(0-6)と1日を4つの区分に区切り、電話および携帯電話の回数を聞いている。その結果、電話の利用率は午前42.5%、午後40.9%、夜46.1%とほぼ一定であり、朝6時から夜12時まで、約4割の人が利用していた。その後午前0時以降の深夜は利用率が落ち、3.7%となる。一方、携帯電話の利用率も午前が16.3%、午後20.1%、夜21.5%と、電話と同様に朝から夜12間で時まで一定している。その割合は電話のちょうど半分の約2割である。携帯電話の普及率は人口の約半分だから、所有者の利用率は電話とほぼ同じぐらいとなる。ここで注目すべきは午前0時以降の利用率が4.4%と電話を逆転していることである。携帯電話では直接相手にかかるために、深夜でもかけやすいのであろう。
携帯電話では深夜にまで利用時間帯が広がるという傾向は、若い人でより顕著にみられる。例えば20代では、電話利用率が午前29.3%、午後29.5%、夜37.3%、深夜4.3%であった。それに対し携帯電話では午前26.9%、午後31.5%、夜48.5%、深夜13.7%となっている。このように深夜帯で携帯電話利用率が高くなる現象は10代でも見られる。
 
   表2.3.9 属性別時間帯別電話利用率 ('00日記式調査)
         午前    午後    夜     深夜
    10代    14.7    19.1    34.6    4.3
    20代    29.3    29.5    37.3    4.6
    30代    45.8    47.0    48.8    4.1
    40代    49.9    48.7    53.7    3.1
    50代    54.0    48.1    49.4    2.9
    60代    46.8    41.3    46.0    3.6
           (回数ベース、未記入に0を代入)
  
  
図2.3.5  時間帯別、年齢別、携帯電話利用率(回数ベース、'00日記式調査) 
 また、若者では夜の時間帯の利用率が高くなっていることも特徴である。固定電話、
携帯電話両方とも、10代、20代では夜の時間帯が最も利用率が高くなっている。これは若い人の間では日中の時間帯に行われることが多い業務上の電話よりも、夜・深夜に行われる私的な通話が多いためと考えられる。
 その一方、40代以降の中高年層では日中の利用頻度が高く、夜の時間帯における通話の増加は見られなかった。これは夜の私的通話がより若い世代より少ないことを意味しているが、彼らが私的通話を昼間に行っていることと、私的通話頻度そのものが若者より少ないこと、の2つが理由として考えられる。
 
1)回数(およびそれを元にした行為者率)の計算は、2000年調査では未記入欄に0を代入して計算した。一方『日本人の情報行動1995』では未記入データを欠損値として処理していた。95年年調査では未記入も少なく、厳密性の観点からこうした処置をとったが、2000年調査では記入欄増加のためか、空欄(0を記入しない)が増加したため、一律に0を代入することにした。時系列分析では同条件で比較するために、95年調査の数字も2000年と同様の方法で再計算した。そのため、95年の数字は本書と前書で食い違いがあるが、その差はわずかで、属性間の傾向性にも差はみられない。
 
文献
中村功「携帯電話と変容するネットワーク」川上善郎編『情報行動の社会心理学』北大路 書房、2001
中島一朗・姫野桂一・吉井博明 「移動電話の普及とその社会的意味」『情報通信学会誌』
 59号、1999、 79-92