災害医療と通信メディア

-救急病院における通信メディアの利用に関する全国調査-

中村功(東洋大学)  福田充(日本大学)
 森康俊(関西学院大学) 関谷直也(東京大学)
 
1.はじめに 

災害時に救急医療が十分に機能することは、人命救助の観点から極めて重要である。しかし、これまでの災害をふりかえってみると、情報伝達がうまくいかないために、その機能が十分活かされないという事態が、くりかえし発生してきた。たとえば1993年の釧路沖地震では、市内のある病院に患者が集中して、重症患者を積んだ救急車がたらいまわしされ、手当が遅れるという例が発生している。市内の他の病院には診療の余裕があったにもかかわらず、消防がその情報を把握できなかったのである。また1995年の阪神大震災では、被災地内の病院が被災し、クラッシュ症候群などの重症患者の手当が十分できなかった。その際、隣接する大阪府などの病院に患者を広域転送する必要があったが、消防でも、病院でも、隣接県に関する情報がなく、転送がほとんどできなかったのである。

 もちろん阪神大震災以降、メディアの発達があり、また広域的医療情報システムも構築されてきた。しかしいまだ、災害医療における情報伝達体制は十分とはいえないのではないだろうか。

 昨年度の研究では、災害時の救急搬送における情報システムについて、その現状と課題を検討するために、@全国の消防本部に対するアンケート調査(回収数237)および、東京消防庁へのヒアリング調査を行った。その結果、管轄内搬送においては、脆弱な公衆網に重要通信が依存している問題が明らかになった。すなわち全国消防アンケートでは、災害時でも、消防本部と病院の間では、一般の固定電話を利用する消防本部が、全体の9割近くに達していた。また、救急隊と病院の通信は、携帯電話に依存していた。
昨年度はどちらかというと消防側から問題を探ったが、本年度は視点をかえて病院側から問題点にアプローチしていきたい。これにより、より多角的な視野から問題点が理解できるはずである。本年度はこうした観点から、全国の救急病院に対するアンケートを行うとともに、JR福知山線脱線事故に対応した尼崎市消防局、福岡県西方沖地震を経験した福岡市消防局、および都内災害拠点病院へのヒアリング調査を行った。
 
 
 
 
 
 
 
 
執筆:中村1、2.13.13.33.74、福田 3.23.5、森 2.23.4、関谷 2.33.6

2. ヒアリング調査

2.1 福岡県西方沖地震

 われわれは福岡県西方沖地震時の救急搬送の問題について、福岡市消防本部にヒアリング調査を行った。以下その内容を紹介する。

 まず、病院情報の伝達と患者集中の問題について考える。聞き取りによると、今回発生した1人の犠牲者は、ブロック塀の倒壊で骨盤骨折をし、内出血により死亡している。地震直後、市内中心部にある済生会福岡総合病院には患者が集中していたが、死亡した患者は、そこに搬送され、手当が遅れてしまったのである。その一方、市内にある他の4つの災害拠点病院には余裕があったという。当時の状況について、済生会福岡総合病院側の白水ら(2006)は「通信途絶のため、救急隊は連絡もなく多数の患者を運んだ。さらに、全体的な傷病者情報、他病院の状況が判らず、当院がどこまで対応すべきか判断できなかった。」と述べている。これは消防への聞き取り内容とも一致しているが、いずれにしても、消防や病院では、各病院の受け入れ可能状況がつかめなかったので、有効な搬送や転送ができなかったのである。

 その原因は、第一に、当時救急指令8名全員が、119番通報の受けつけにかかりきりになってしまったことにある。そのため指令室は混乱してしまい、救急車の配車指示が充分できなかったのである。第二に、救急隊は、平常時と同様に、携帯電話から病院に連絡して収容先を決めようとした。救急隊の携帯電話は災害時優先電話だったが、今回、携帯電話事業者の災害時優先機能に不具合が生じ、携帯電話が使えなくなってしまった。その結果、近くの病院から順次飛び込みで搬送する状態になったのである。そして第三に、病院側では、他の拠点病院との通信手段が固定電話と携帯電話しかなかった。そのため、輻輳による通話不能で、他院に余裕があることがわからなかったのである。

他方、広域災害救急医療情報システムはどうだろうか。福岡県では20043月から運用しているが、今回の地震では、有効に活用できなかったという。その原因は、通常時から、「医療機関はデータを入力しない、したがって見ても無駄、どうせ見ないのだから入力しない」、という悪循環が存在していたようだ。その後、これを教訓に、県からの働きかけもあり、2005年台風14号の時には、病院のデータがかなり入力されたという

 今回の経験から、福岡市消防本部としては次のような解決策が考えられるという(参照福岡市消防局資料)

 第一は、人手が足りない、情報がない、といった最悪の事態を想定した防災計画を立てておくことだという。例えば、まず拠点病院に最低何人かは受け入れてもらうように取り決めておき、その限度までは何も考えずに搬送する。そしてそれを越えた場合は、搬送合計が各病院分散するように搬送する。こうすれば受け入れ可能患者数などの情報がない場合でも、混雑した病院への搬送集中という最悪の事態は避けられる。また災害時の通信指令内の役割分担も明確にしておく必要がある。要員が足りない中でも被害情報の把握や指揮をとる人を確保しなくてはならない、ということである。さらに防災訓練にしても、人手不足や情報不足を前提とした、実際的なものにする必要があるという。

 一般的にいえば、救急患者の受け入れ可能人数には、ある程度の弾力性があるといえる。たとえば、ある救命救急センターの幹部によると、病院は平常時から、「受け入れ不可」の状況下でも、場合によっては無理をして患者を受け入れることがあるという。まして災害時であればなおさらであろう。災害拠点病院にはそのために組立式のベッドや輸液等の備蓄もある。他方、搬送済みの患者数は、消防無線やモバイル搬送患者情報システム(後述)で共有化できればよいが、そうでなくても、ある隊はA病院、B病院、C病院に送り、他の隊はC病院、D病院、E病院に送るなど、病院の規模を考慮して、分散搬送体制を決めておくことは、できるのではないだろうか。

 第二に福岡市消防局が考えているのは、拠点病院間の通信手段の確保である。拠点病院に防災無線またはMCA無線などの無線を配備してはどうかということである。防災無線は、既に東京都、名古屋市、札幌市などの大都市では、拠点病院に入っている。しかし総務省によると、病院やライフラインに入れる「地域防災無線」の整備率は、全国でまだ10.9%(200512月現在)にすぎない。

 第三がマスメディアの活用である。具体的にはテレビ(L字スーパー)やラジオで、混雑している病院の状況を広く呼びかけてもらうということだ。今回の地震時も、人工透析については、透析病院の幹事をしている「福腎クリニック」が報道各局に電話をして、診療困難な病院と診療可能病院がマスコミで流されたという。医療機関から直接、放送事業者への連携がみられたケースとして注目される。

 第四の提案は、組織間の連携を促進することである。例えば今回、市の保健福祉局と消防局救急課の間で、診療可能病院や受入可能数などの情報が共有できなかった。それぞれが二重に調査をしていた事例もあったという。そこで、災対本部に医師会から要員を派遣してもらえば効率的ではないかという。また現地においては、自衛隊、赤十字、医師会など様々な機関から医師や看護婦が集まるが、それらを効率的に運用するために、現地コーディネーターが必要ではないか、との指摘もされている。

このように、今回の地震を経験した福岡市消防局では、災害医療のあり方について様々な教訓を引き出そうしている。いずれの指摘も、災害医療を考える上で重要なことで、今後これらを全国的にどう生かしていくか、が課題となるだろう。

次に福岡市の新情報システムについて少し触れておく。福岡市では、患者を搬送した後に、病院から搬送に関する情報を、救急車に積んだノートパソコンに入力し、携帯のパケット通信(ドコモのドゥーパ)で送信する、モバイル搬送患者情報システムを導入している。これにより業務処理が効率化され、搬送後病院から次の現場に直行する時に便利である。今回の災害時、携帯電話の音声は使えなかったが、このシステムは機能していたという。携帯音声に比べるとパケット通信は輻輳が少ないので、この仕組みが機能したのであろう。これにより救急車のパソコンからインターネットができるとすれば、それで広域災害救急医療情報システムを見ることもできるが、当時そのようなことは実行しなかったという。装備としては一般向けの機器を利用したものなので、導入はしやすい。搬送済みの患者情報に加えて、広域災害救急情報システムの病院情報も充実すれば、各救急車から情報を検索し、効率的な搬送ができるようになるかもしれない。

また今後の情報システムとして、福岡市消防局では、RFID(ID情報を埋め込んだICタグから、情報を無線によってやりとりする技術)を用いたトリアージタグの実証実験を行っている。このシステムでは、トリアージをして手元のPDA端末から情報を入力する。トリアージにかかる時間は従来と同じだが、後処理が1/2ほどの時間になるという。混乱した現場の作業量をできるだけ縮減すること、現場、指令センター、医療機関の間で即時的に情報が共有できることなどのメリットが考えられる。

一方福岡市医師会では、「モバイル一斉連絡システム」が2005年7月から稼働している。これは、災害が起きると医師会から医師にメールが送られ、医師の安否や医療施設の状況を携帯ウェブから入力できるシステムである。パケットの輻輳が心配だが、集計結果は消防局でも見られるので、うまく機能すれば、広域災害救急医療情報システムと同様の機能を果たすことができるかもしれない。

福岡市消防本部への聞き取り(概要)

1.地震で1人が死亡。救急指令(8名)は全員が119番対応かかりきりになり、救急車のオペレーションができなかった。救急車に積んでいた災害時優先の携帯電話は不通のため、近くの病院から順次飛び込みで搬送する状態になってしまった。

2.解決策としては、

@人手が足りない、情報がないといった最悪の事態をも想定した防災計画が立てられるべきである。

A災害時の通信指令内の役割分担も明確にしておく必要がある。

B災害拠点間の通信手段の確保 防災無線またはMCA無線の配備

Cマスメディアの活用 テレビ(L字スーパー)やラジオで混雑している病院の状況を呼びかけてもらう。

3.他機関とのコラボレーションの重要性

@医師会の参加

 診療可能病院、受入数などについての情報共有ができなかった。保健福祉局と消防の救急課で2重の調査をしていた。市の災対本部に各部署から要員は来ているが、災対本部で救急オペレーションをしているわけではないので、情報は共有されなかった。災対本部に医師会から要員を派遣してもらえれば、それぞれがそこから情報を引き出すことができるので、効率的ではないか。 

A現地災対 自衛隊、赤十字、医師会などいろいろな機関から医師や看護婦が集まったが、その調整がなされなかった。医事に関する調整役が必要である。

4.新情報技術の可能性

@県広域災害救急医療システム

 2004年3月から運用。活用できなかった。医療機関がデータを入力してくれない→見ても無駄→どうせ見ないのだから入力しない、という悪循環。2005年台風14号ではデータが入力された。県から入力されていない病院に通達を出したらしい。こちらとしても未入力の病院には電話をして入力を促すことを検討する必要があるかもしれない。

また防災訓練でも、病院を巻き込んた訓練ができないかと考えている。

Aドコモのドゥーパを使ったモバイル搬送患者情報システムは使えた。患者を搬送した後に病院から搬送に関する情報をパソコンに入力して、パケット通信で送っている。こうすると事務処理が効率化される。救急車のノートパソコンからインターネットはできるのだから、それで広域災害救急医療システムを見ることもできたのだが、そんなことは考えもしなかった。

BICダクつぎトリアージ実験は有効だった。トリアージをして手元のPDA端末から情報を入力する。トリアージにかかる時間は従来と同じだが、後処理が1/2ほどの時間になる。つまり何人が赤で、何人が黄色、各人をどの車両でどこに搬送するかという処理をこれまでは人力で行っていた。それが自動化されるので便利とのことである。こうしたシステムを普段の業務管理に使えないか考えている。ネックはコストである。タグは安いがシステム開発が高い。そこで東京消防庁を巻き込む計画である。

C福岡市医師会ではモバイル一斉連絡システムを開発中である。

災害が起きると医師にメールが送られ、医師の安否や医療施設の状況が入力できるシステムがある。これは消防でも見ることができる。

(中村功)

2.2 JR福知山線脱線事故

 

2005425日午前9時18分に発生したJR福知山線脱線事故は、107名の死者と、500名を超える負傷者を出する大惨事となったが、災害医療を考える上で、1つのケーススタディーとなる。ここでは尼崎市消防本部へのヒアリング調査をもとに、災害と医療をめぐる情報の諸問題を整理する。

(1)報道ヘリ問題

事故発生から救援活動が開始された9時台、10時台に問題となったのは、救出現場において、消防無線がヘリの騒音で使えなくなり、現状把握が遅れた点である。具体的には、線路で隔てられた東西の現場間で連絡ができず、その結果として、救助が西側に偏ってしまったのである。ヘリの騒音が救助を妨げる問題は、阪神淡路大震でも議論になったが、飛行を制限する区域や時間を設けるなど、何らかの対策が必要であろう。

但し、この事故をめぐる救援活動のキーワードの一つが「自主参集」や「民間搬送」にあるとすれば、発生後、早期の映像配信によるニュース特番報道が、医療関係者のみならず、近隣の事業者や住民の救援活動につながったこともまた事実であろう。兵庫県災害医療センターの総括によると、「緊急搬送養成に対する入力」作業を行う情報源に「マスコミ」「テレビ」を挙げている医療機関は、22機関中9機関あり、広域災害・救急医療情報システムの3を上回っている 。報道ヘリは現場を混乱させる問題を孕んでいるが、事態の覚知にはやはり絶大な力をもっており、報道機関と医療機関がそれぞれの役割を担えるにはどのような工夫が必要かは今後の検討課題となろう。

(2)トリアージ・搬送

 第二に病院患者が集中することがなかったか、という点である。結果としては、重傷者については、市内3つの第三次医療機関に分散して搬送され、人数的にもキャパシティーを越えなかったために、大きな問題は起きなかった。その一方、事故現場近くの尼崎中央病院については、軽傷者を中心に患者が殺到している。しかし幸いなことに、この病院が第三次医療機関ではなかったために、重傷者が搬送されなかったのである。

(3)自主参集・民間搬送・警察/消防の分掌

第三に、今回は自主参集が機能し、それが災害時の通信途絶時の対策の手がりとなることが注目される。たとえば、尼崎市消防局と神戸市消防局の間では電話の輻輳によりやり取りがうまくできない時間帯があったが、神戸市消防局はテレビを見て自主的に出動したという。また、近隣の府県・市町村からの緊急消防援助隊も今回は有効に活用された。とくに、患者が集中した病院から近隣の病院までの二次搬送においてその力が発揮されたようである。

また、多くの軽傷者が民間事業者のボランタリーな支援や警察車両によって搬送されていることも注目される。周辺事業所では、事故車両からの被害者救出、安全な場所への誘導、応急手当、病院への搬送など献身的な救助が行われた。このような事業所の広義の防災協力活動には、各事業所の管理職の判断、組織力、事業内容に応じた資機材の提供などが大きな成果を上げることにつながった

 

2.1 JR福知山線脱線事故の搬送車両

搬送手段              重傷       中等症    軽傷       合計

消防車両              41          24          52          117

警察車両              1                       134        135

民間支援                                    137        137

尼崎市消防局の資料による)

(4) 広域災害・救急医療情報システム

第四に、広域災害・救急医療情報システムの問題である。兵庫県には県の広域災害・救急医療情報システムがあり、普段から運用されている。1日に2回、診療科ごとの受け入れ可能人数を病院側が入力することになっているが、実際は更新しない病院も多い。そこで尼崎市消防局では、管轄内23の病院に朝と晩の2回、一般の固定電話から電話し、状況を確認しているという。今回、消防では940分にこのシステムに災害発生を入力した。最も早いところでは947分に兵庫県災害医療センターが状況を入力した。その後11時半までに神戸市から3病院が入力した。入力は比較的迅速だったといえるだろう。しかし10時半頃には搬送が一段落したので、実際には搬送に活用しなかったという。その理由としては、わずかな時間でも病院側の入力を待っているわけにはいかない、ということもあるだろう。しかし、普段からシステムの情報内容が信用されず、使われていなかったという背景も見逃すことはできない。まずは情報内容を充実させ、平常時から積極的に利用していくことが重要であろう。

(森康俊)

 

2.3 都内災害拠点病院

−災害医療情報の現状と課題−

帝京大学医学部救急救命センター教授坂本哲也氏に、20051228日に(1)災害医療の現状、(2)救急医療と情報システム、(3)災害時の医療と通信、(4)病院の災害対策などについて話を伺った。以下、そのヒアリングの概要を記述する。

 先に要点をまとめると、日本において災害医療への取り組みは、阪神・淡路大震災および地下鉄サリン事件以降に本格的に取り組みがはじまってきた。だが、現状として、災害時の医療体制の整備は不十分であり、病院同士の情報共有が平時でもなされていないため災害時も病院同士の連携が難しいと考えられており、災害時の無線を使った情報伝達も現在まだ訓練段階であり、病院・医療機関の防災対策は不十分であるという問題点が多いことがわかった。

 

2.3.1 災害医療の現状

(1)災害医療の基本原則

救急医療においては、マネージメントの重要性が指摘されるようになってきた。救急医療にはTTTTriageTreatmentTransport)が重要と言われたが、最近ではそれに加える形でCCSCATTTCommand and ControlSafetyCommunicationAssessmentと上記のTTT)が重要だと言われている。すなわち医療チームが現場でいきなりトリアージ、処置、搬送という行為をするのではなく、まず適切な指揮下に入り、自分の安全を確保し、コミュニケーションを図り、評価をする必要があるという。英国の災害医療についての標準的なマニュアルではこのことが記されている(Advanced Life Support Group、小栗顕二・吉岡敏治・杉本壽監訳「MIMMS大事故災害への医療対応:現場活動と医療支援:イギリス発、世界標準」永井書店、2005年)。

(2)DMAT災害医療派遣チーム

東京の災害医療派遣チーム(DMAT)はもともと、独立行政法人国立病院機構災害医療センター、日本医科大学付属病院、杏林大学医学部付属病院、帝京大学医学部附属病院、都立広尾、墨東、府中病院の7病院からはじまっており、現在は17の組織が参加している。医師・看護士からなる30人から40人のチームで、災害地に赴き、医療活動を行う。派遣は厚生労働省または東京都福祉保健局からの要請で動く場合と、東京消防庁の援助隊に同行する場合の2パターンがあるという。

おおむね各災害拠点病院には自前のドクターカーが一台あり、医師・看護士からなる「ステージング・ケア・ユニット」と呼ばれるチームを6時間以内に編成することになっている。ケースに応じて、羽田、立川、入間、厚木などの飛行場に集合し、自衛隊のヘリコプターにて現地に向かう。体制は固定的なものではなく、冗長性をもって様々なケースに対応できるようにしている。新潟県中越地震などでは活動実績がある。現在は、東海地震を想定しうるケースとして、訓練や医療体制の整備が検討されている。

(3)災害医療の課題

現在の問題としては、2点ある。

一点目は、自衛隊の輸送機には一度に十数人しか乗せられないため、多くの医師を即座に現地に派遣することが難しいことである。二点目は、患者を搬送できたとしても、全国的に災害医療の後方救援体制が整っていないことである。災害時には、現地から重度の患者を全国に搬送する。だが搬送できても、十分な治療が可能な病院数が少ない。東海地震時に全国の対応できる病院の治療可能人数を合計しても重度の火傷は339人、外傷270人、クラッシュ症候群は840人しか対処できない。たとえば「重度の火傷」の場合は、帝京大学で対処できるのはせいぜい23人である。中には1病院で10人、20人収容可とする病院もあるが、現実的には、それは考えられないという。東海地震に対処するだけの医療体制が整っていないのが現状であり、早急な災害時の医療の後方支援体制の整備が求められている。

 

2.3.2 救急医療と情報システム

 全国的に、救急医療情報システムはシステムとして整備されていても、実際に使われていないことが多い。全ての病院でこまめに入力しているわけではないからである。

しかし東京消防庁の救急医療情報システムの場合は、入力を怠っていると、病院に連絡が入り、入力を求められるなど病院に対する締めつけが強く、比較的うまく運用されているといえる。帝京大学では、1人の患者の処置が終わってまた受け入れ可能になるとすぐに×を○にするなど、状況が変わるごとに更新しており、1日に56回以上は更新している。救急救命センターの場合はその時の責任者である医長が入力を行い、他の診療科では看護士などが行っている。

(1)救急医療の情報システムの問題点

しかし大きな問題が2点ある。

@消防庁の一元管理の結果として「病院同士の情報が共有されていない」こと

現在、消防は、現場に近い病院に順に電話をして、救急患者の受け入れ可能性をたずねている。そして現状のシステムでは消防側だけが全病院の状況を把握している。

一方、病院側では他の病院の救急患者受け入れ可能状況を閲覧できない。ゆえに病院側で受け入れについて判断に迷うことも多いという。もし病院間で相互の状況を知ることができれば、人手はあまっているがベッドが満床のときなど、まず受け入れて治療・処置を自病院で行って、入院は別病院にするということも可能になるが、現状ではそれができない。

これは人間関係の問題ではなく、通信手段とシステムの問題である。二次医療圏(たとえば板橋・練馬)の中で救急救命センター間の人的なつながりはある。だが緊急時の通信手段がない。災害時優先電話となっているホットラインは消防と各病院の間の連絡手段であり、非公開番号になっていて、その番号を病院同士は知らない(図6.3.1)。

このような病院相互の情報交換が欠如しているのは、救急医療体制を消防任せにしている部分が大きいことも原因の一つである。よりよい医療を目指すのであるから、本来は医療側が独自にシステムを構築するべきかもしれないという。以前、東京消防庁に各病院でも他の病院の状況を閲覧できるようにお願いしたことがあるが実現はしなかったという。

 例えばアメリカのメリーランド州では病院相互が状況を見ることができる。搬送のためではなく、医療者がよりよい医療をするためにシステムを運営している。センターが2時間ごとに電話で問い合わせ情報をアップデートしている(消防ではなく保健局がシステムを運営している。英国でも厚生省がシステムを運営している。)。

 

A受け入れ可能性を○か×で判断できない「グレーゾーン」の存在

また、コンピュータの入力上の問題として、受け入れ可能かどうかを○か×か、いずれかに絞ることが難しいということがある。ケースバイケースというものが多いのである。たとえば満床時であっても前途ある若者なら無理しても入れるとか、近くで首相が倒れたら、無理しても入れるとかケースによって微妙な場合がある。

コンピュータシステムだけではこうしたきめの細かい情報をやりとりすることはできない。病院の受け入れ可能状況は○か×といった単純なものではなく、グレーの領域があるということだ。

 

2.3.1 病院間の通信手段がない

 

(2)救急医療の情報システムの問題点の解決策

 坂本教授のアイデアとしては、輪番制で救急病院の医師が責任者となって、音声で各病院間でネゴシエーションを行うシステムを構築してはどうかという。システム構築に当たっては行政(都の福祉保険局)をどうからませていくかが課題であるが、実効性から考えたばあいは、医療側が主体となる方がよいのかもしれないともいう。即応策としては、既に引かれている災害時優先電話をもう一つ非公開番号にして、二次医療圏の拠点病院間のホットラインとしてはどうかともいう。

災害時も拠点病院間にはつかえる情報を共有する連絡手段がない。というよりも、それは制度的にも設計されていない。災害救援情報はすべて東京都(現実的には、救急のため出動する東京消防庁)で一元管理することになっている(図2.3.2)。(そして、災害時に消防署への通報が増大し、搬送に混乱することも珍しくはない。)そもそも、平時でも拠点病院間で情報を共有するための連絡手段がなく、それが日常、現状で抱える大きな問題点でもある。

災害時だけではなく、病院相互が受け入れ可能状況を知る普段から運用されるシステムの構築、そしてそれを含めた人間関係の構築が現在求められている。災害時に限らず、これらの情報システム構築については現状では行政まかせになっていることから、医療側の主体性が問われているという。

 

「災害時医療救護活動とトリアージ」トリアージ研修会テキスト改訂委員編,東京都健康局,2003年,p.5

 

2.3.2 医療救護活動の命令、要請および情報連絡系統図

2.3.3災害時の現地医療と通信

 災害時の現地医療における通信は、近年、その重要性が認識されるようになりはじめてきた。現状の課題点としては、「無線通信(トランシーバーによる複数者の同時通信)」に習熟することと、日本赤十字社とDMATの連携体制の確立の2点であるという。情報の共有のために、一対一通信ではなく、多対多の通信である無線通信が重要となっているのである。

(1)無線通信に習熟すること

 通常、DMATでは無線を使うが、現在、東京DMATでは持っていないし、使い方に習熟してはいない。災害現地における通信手段としてトランシーバーの使い方に習熟すること、訓練が現在の課題である。

第一に、災害現地で必要とされる情報を、簡潔に伝える訓練が重要であるという。具体的には、My call-sign or name(氏名)、Exact location(場所)、Type of Incident(災害の種類)、Hazard, present or potential、(災害がすでに発生しているか、発生の可能性があるか)、Access to scene(現地への交通)、Number and severity of casualties(被害者の数と重症度)、Emergency Services, present and required(救急車が到着しているか、救急車がひつようか)という7つの項目であり、これは英国では頭文字をとって「METANN」という略称で呼ばれている。第二に、医師が普段使わない「無線」について、基本的なコミュニケーションのとり方(「以上」「どうぞ」で受け答えの区切りとするといった応答のコツ)に慣れている必要もある。

20054月、尼崎のJR西日本宝塚線列車脱線事故の際には千里救急救命センターが無線を持みこみ、医師同士が連絡をとりあったという。トランシーバーは1対多の情報通信ができるので便利だったようである。現場では各地の消防も集まるが寄り合い所帯である。消防無線には共通波があるが、周波数が少なく強力ではない。そこで医師同士が連絡し処置の優先順位などを話し合ったという。

(2)日本赤十字社とDMATの情報面・救援活動における連携

 日本赤十字社(以下、日赤と略)は救援活動が本務であり、組織活動としても、訓練の度合いとしても強力である。災害時に日赤は医師・看護士だけではなく、事務職員が大量に入り、その能力は極めて高い。通信手段としても、独自の周波数を持っている。

だが、現状は、災害医療全体において、日赤はこの部分を担当してください、という部分的に任せるという状態である。DMATは日赤の機器を使うことができないし、日赤の指揮下に入ることもできない。今後は日赤とDMATがどう連携していくかが課題である。

 

2.3.4 病院の災害対策

 病院自体の災害対策としては、非常に手薄のようである。これは他の病院も多かれ少なかれ似たような状況であろうという(これは、3.6節で詳細に検討する)。

(1)病院の建替えと耐震化・災害対応の問題

たとえば帝京大学病院ではビルが築30年以上と老朽化しているので、耐震だけでなく、停電・断水の対策は不十分である。新病棟が2009年に完成するまでは、二重投資を避けるために対応ができない状況である。これは病院に限ったことではないが、災害拠点において、建替えを考えている場合、災害対策がその建替えが行われるまでは進まないということを意味している。

(2)医薬・医療品の備蓄は不十分

医薬・医療品は効率化のため、かつてよりデッドストックを減らしており、備蓄は少ない。コンビニのような状態である。現在入院している患者用に3日間はもつようにしているが、大災害で新たに多くの患者が来ると早くなくなる。輸液などはある程度、ストックしている。スズケンなどの薬品問屋も一般の電話で注文するだけだから、災害時に医薬品が確保されるかどうかはわからない。確かに東京都を中心として医薬品の供給についての協定はあるが、「最大限の善意を持って」対応するという努力義務の世界であり、実効的なロジスティクスが確保されているわけではないという。

(3)病院自体の防災対応(防災訓練・防災担当者)

病院で防災訓練は行われているが、どう逃げるかということが中心であり、かつ火災を想定したものである。医師で防災担当は指定されているが、あて職で、災害対応に詳しくはないという。設備面は総務課長が詳しい。白髭橋病院の石原院長などは夜間防災訓練をするなど熱心なところもあるが、まれであるという。

(4)職員参集

職員参集に関しては、マニュアルがあるにはあるが、震度による登院基準などは整備されていない。職業倫理に基づき自主的に登院するであろうという程度である。通信手段も具体的な特別の手段はなく、自宅の電話と携帯電話にかけるしかないのが現状である。特に都心部では、病院から離れたところに住んでいる人が多いので、どれだけの人が駆けつけられるかはよくわからないという。自宅近くの病院に駆けつけてそこで手伝いをするのが理想だが、現状ではそのような制度的な仕組みはない。これは、各病院ではなく、医療セクター総体として対応すべき問題ではあるが、現在のところ、そのような動きはでてきてないという。

(5)災害時の通信手段

消防庁とのホットラインはあるが、それ以外の優先的な通信回線は、特にはない。災害時優先電話も引かれているが、どれが災害時優先電話なのかはよくわかっていないのが現状である。災害時の通信手段としては、衛星携帯くらいしか考えられないが、今はなく、これから導入するという状態である。現状は消防無線網に頼るしかない状況であるという。

(関谷直也)

参考文献:

 東京都健康局,「災害時医療救護活動とトリアージ」トリアージ研修会テキスト改訂委員編,2003

 大友康裕(分担研究者),平成16年度厚生労働科学研究(医療技術評価総合研究事業)新たな救急医療施設のあり方と病院前救護体制の評価に関する研究(主任研究者小濱啓次)分担研究 災害時における広域緊急医療のあり方に関する研究 平成16年度報告書、2005

 Advanced Life Support Group、小栗顕二・吉岡敏治・杉本壽監訳、『MIMMS大事故災害への医療対応:現場活動と医療支援:イギリス発、世界標準』,永井書店、2005

白水徹、岸川政信、鳴海篤志、恒吉俊美「福岡県西方沖地震時の当院の対応と問題点」『日本集団災害医学会誌』Vol.l0, No.2, 2006, p184.

 福岡市消防局救急課資料「福岡県西方沖地震−救急医療体制の問題点と今後の課題−」

 兵庫県災害医療センター「JR福知山線列車事故における現地医療活動について」2006.1.16  http://www.hemc.jp/

 総務省消防庁「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力検討会報告書」2005.12  http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/051226.pdf


3.病院アンケート調査

3.1 調査目的・調査概要 

 災害医療における通信上の問題点を探るために、われわれは昨年全国の消防本部に対するアンケート調査を行った。そこでは救急医療の分野でも携帯電話への依存が進行し、災害時に携帯電話が使えなくなると、ほとんどの消防本部で問題が起きることがわかった。本年度は救急搬送の先、つまり消防本部の通信相手である救急病院に焦点を当てて、どのような問題があるかを調査することにした。

対象としたのは、全国の災害拠点病院548施設と、札幌市(96)東京都(210)、名古屋市(65)、大阪市(93)、福岡市(88)の全救急病院(第二次医療施設)552施設、合計1100施設である。回収数は237(うち災害拠点病院が150、拠点病院でない救急病院が81)で、回収率は22%であった。方法は自記式郵送法で行い、調査期間は200629日から36日の、18日間である。

 以下ではこの病院調査の結果を報告する。

 

3.2 平常時の救急搬送の現状と、救急医療情報システム

まずは、平常時における救急搬送の現状と、平常時の救急医療情報システムについて概観する。調査データは、今回の調査対象である237の病院の結果を全体データと示し、基幹災害拠点病院(N=22)、地域災害拠点病院(N=128)、指定なし救急病院(N=81)の区別をしながらグラフを示すことにする。

 最初に平常時の救急搬送で、どのような通信手段が用いられているかを検討する。平常時に、救急患者の受け入れ可能状況の伝達のために、どのような通信手段が利用されているのだろうか。救急搬送に関わる4者の間には、図3.2.1のような関係が成立する。1)消防本部と救急病院の間では、受け入れ可能状況の確認が必要になり、2)消防本部と救急隊の間には配車指令の連絡が必要になる。3)救急隊と救急病院の間では、患者の病状の伝達、病院側の受け入れ可否の確認が必要になり、4)患者と救急隊の間では、到着時間、到着前の対応指示が必要である。この消防本部、救急隊、救急病院、患者の4者の間では、このような4つの通信コミュニケーションが存在する。さらに、救急患者の搬送、転送のために、5)病院間の受け入れ、搬送の確認のコミュニケーションが必要になる。

3.2.1 消防本部・救急病院・救急隊・患者の4者関係

 

 この4者関係の中で、今回の調査の中心である救急病院はどのような通信システムを利用しているのだろうか。@消防本部と救急病院の間、A救急隊と救急病院の間、B救急病院と救急病院の間、この3つの通信手段について示したのが図3.2.2である。このグラフを見ると、平常時の通信手段は、全体的に見て主に「一般の固定電話」に依存していることがわかる。個別に見ると、@消防本部と病院の間では、一般の固定電話の利用率が81.9%、ホットラインが36.7%、コンピュータネットワークシステムが27.4%、携帯電話が20.7%、災害時優先電話が20.3%で、固定電話を中心に多様なメディアがバランス良く利用されていることがわかる。ホットラインやコンピュータシステムが利用されている割合も必ずしも低くない。また、A救急隊と救急病院の間では、一般の固定電話が71.3%、携帯電話が37.6%、ホットラインが36.3%、災害時優先電話が13.5%、コンピュータネットワークシステムが12.2%という割合であった。やはり救急隊と病院の間の通信手段は、他と比べて携帯電話やホットラインが利用される割合が相対的に高いことがわかる。B救急病院と他の救急病院が連絡を取る場合の通信手段は、一般の固定電話が95.4%と圧倒的に固定電話に依存していることがわかる。携帯電話が15.2%、災害時優先電話が10.5%の利用率であるが、それ以外のメディアは一桁台の割合に過ぎなかった。病院を中心に見た平常時の通信手段は、一般の固定電話が中心で、それを補うメディアとして携帯電話やホットライン、災害時優先電話が存在するという状況である。

 

3.2.2 平常時における組織間の通信手段(複数回答)

 

 続いて、平常時の救急搬送に関する問題点を示したのが図3.2.3である。このグラフを見ると、病院が多く感じている問題点は、「受け入れてみたら、状況が事前の話と異なり、困ることがある」が56.5%ともっとも高く、続いて「他の救急病院の状況がわからないので、受け入れるべきか否か迷うことがある」が26.2%となっている。前者は救急搬送における、救急隊と病院の間のコミュニケーションの問題であり、これは両者の通信コミュニケーションにおける情報交換が綿密に行われれば解消できる問題である。また後者の問題は、救急病院と救急病院の間にお互いの状況がわかるようなネットワークシステムが存在しないことによって発生する問題である。周辺地域の救急病院がお互いの状況が相互把握できるような情報システムが必要であろう。続いて、「コンピュータシステムへの受け入れ状況入力が遅れがちになる」が15.6%、「コンピュータシステムはあるが、実際には使われていない」が13.1%と、救急搬送に関するコンピュータシステムに関する問題点が指摘されている。平常時における救急搬送にはどのようにコンピュータシステムが活用されているのだろうか。続いて、平常時に救急病院が使用している「救急医療情報システム」に関する調査結果を考察する。

 

3.2.3 平常時の救急搬送に関する問題点(複数回答)

 

 救急病院の多くは「救急医療情報システム」を利用している。これはコンピュータ上で自分の病院の患者の受け入れ可能数をデータ入力することによって、消防本部に情報を伝えるシステムである。このシステムを導入しているかどうかを示したのが図3.2.4である。このグラフを見ると、全体の80.2%がこのシステムを導入しているが、まだ2割の救急病院が導入していないことがわかる。これはどのレベルの病院でも同じ傾向である。

3.2.4 平常時利用の「救急医療情報システム」の導入

 では、救急病院はこの救急医療情報システムの端末を病院のどこに設置しているのだろうか。図3.2.5のように、病院全体で48.9%が病院事務室に端末を設置していることがわかる。ナースステーションに端末を設置している病院が12.1%、警備員室に設置している病院が5.8%であるが、この全体的傾向は地域災害拠点病院、指定なし救急病院に共通してみられる傾向である。基幹災害拠点病院では、その他の割合が高いが、救命救急センター、救急室、救急外来、医局という自由回答が多かった。また、「病院内のどのパソコンでも見られる」、という回答も1件だけあった。つまり、救急病院のうち、基幹災害拠点病院には、救急外来やセンター、医局にシステム端末を設置している病院が多いが、地域災害拠点病院では病院事務室にシステム端末を設置している病院が多いという傾向があるということである。

3.2.5 平常時利用の「救急医療情報システム」端末の設置場所

 

 それでは、この救急医療情報システムの入力は誰が担当しているのだろうか。システム端末の設置場所と入力担当者の間には重要な関係があると推測できる。それを示したのが図3.2.6である。このグラフを見ると、全体的には病院の事務職が入力担当になっている割合が69.5%と非常に高くなっていることがわかる。これは、システム端末が病院事務室に多く設置されていることからも理解できる傾向である。特に地域災害拠点病院(74.5%)でその傾向が強いことがわかる。基幹災害拠点病院では医師が入力担当である割合が44.4%、看護士が入力担当である割合が27.8%と比較的高い傾向が見られる。基幹災害拠点病院では、救急救命センター、救急外来、医局で医師や看護士がこのシステム端末に直接データ入力しているという実態が明らかとなった。

 

 

 

3.2.7 平常時利用の「救急医療情報システム」の入力担当者(複数回答)

 

 このシステムが常時監視されていて、データ入力の要請にすぐ対応できるかどうかを示したのが図3.2.8である。これを見ると、病院全体で「確実にすぐに確認できるだろう」が38.9%、「おそらく、すぐに確認できるだろう」が31.6%と約7割の病院が「すぐに確認できる」と認識していることがわかる。その傾向は基幹災害拠点病院では高い傾向にあるが、反対に地域災害拠点病院では低い傾向にあり、この差異はシステム端末の設置場所と入力担当者の関係によるものであると推測できる。

3.2.6 平常時利用の「救急医療情報システム」の確認状況

 ではこのシステムにはどの程度の頻度でデータ入力されているのだろうか。図3.2.8のような結果が得られた。「1日に1,2回程度」の更新が62.6%ともっとも多く、「1日に3,4回程度」の更新が13.7%であった。一方で「ほとんど更新しない」病院が19.5%もあることは問題である。1日に数回程度の更新というデータ入力がほとんどであることが明らかとなったが、これはどのレベルの救急病院でも同じ傾向が見られる。

3.2.8 平常時利用の「救急医療情報システム」のデータ入力頻度

 

 それでは、救急病院はこの救急医療情報システムに対してどのような問題点を認識しているのだろうか。複数回答でたずねたところ、図3.2.9のような結果が得られた。「とくに問題はない」と回答した病院は全体で21.1%しかなかった。もっとも回答が多かった問題点は「院内が忙しく、入力しなかった」の35.3%であるが、これは指定なし救急病院(42.4%)、地域災害拠点病院(33.3%)で高い割合を示したものの、基幹災害拠点病院では11.1%に過ぎなかった。「担当者が不確定で入力できなかった」という問題も全体では18.9%であったが、これも指定なし救急病院(13.8%)と地域災害拠点病院(24.5%)で顕著に見られる現象である。院内が忙しく入力できない、担当者が不確定で入力できないという問題は、病院の規模とマンパワーの問題によるものであると考えられる。病院規模とマンパワーの小さい救急病院において、システムへのデータ入力をどう維持するかが重要な課題である。「コンピュータシステムに受け入れ可能状況を入力するのが遅れがちになる」は全体で24.2%、「コンピュータシステムはあるが、実際には使われていない」は全体で11.1%であるが、いずれも地域災害拠点病院で割合が高い傾向がみられる。このコンピュータシステムの利用、運用に関する問題点は、地域災害拠点病院で顕著であることがわかる。「更新が遅れて、消防から電話がかかってくる」という回答も全体で18.7%であるが、データ入力が遅れて消防本部から電話がかかってくるのであれば、本来何のための救急医療情報システムなのか、全く本末転倒であると言わざるを得ない自体が発生している。「受け入れてみたら、状況が事前の話と異なり、困ることがある」という回答が19.5%あるのもうなずける状況である。本来、消防本部と救急病院の間の通信コミュニケーションを効率化させるためのシステムである以上、このシステムが有効活用されなければ、本質的な救急搬送の問題の解決には役立たないであろう。これらの問題点が解決される運用方法の検討が引き続き必要であろう。

3.2.9 平常時利用の「救急医療情報システム」に関する問題点(複数回答)

 

 それでは、救急病院はこのような状況の中でこの救急医療情報システムをどの程度評価しているのだろうか。図3.2.10のように、全体で21.6%の救急病院が「非常に役に立つ」と回答し、41.1%の病院が「やや役に立つと思う」と回答している。約6割が役に立つと認識していることがわかるが、その反面、4割近い病院が役に立たないと認識していることは大きな問題であるといわざるを得ない。とくに、この傾向は、基幹災害拠点病院、地域災害拠点病院と、規模が大きくなるに連れて、システムへの評価が低くなっている傾向が見られる。このシステムが評価されない原因は何なのか。図3.2.9で挙げられたような問題点が改善されることが、このシステムの有効活用とその評価を高めることに重要である。このシステムの問題点は、システムのソフト面の構造にあるだけではなく、その運用する側の体制にもある。それぞれの病院が抱えている個別の問題を解決する方策を、それぞれの病院が検討し、解決することによって、このシステムの効率的な運用が実現され、よりよい救急搬送が行われることが望まれる。

 

3.2.10 平常時利用の「救急医療情報システム」に対する評価

(福田充)

3.3 災害時の通信

利用メディア

 次に災害時に利用される通信メディアについて見ていく。まず災害時に医療施設と各機関の間で遣われることになるメディアについてたずねた。消防本部との間では平常と時同様に、一般の固定電話が多いが(82.7)、災害時優先電話も平常時の倍以上の45.6%が利用することになっている。ついでホットライン(32.9)、携帯電話(32.1)、コンピュータネットワークシステム(27.8)などが、いずれも            3割前後の使用率となっている。消防本部と医療施設との連絡は、本的には基本的には消防側が病院にかけることが多い。災害時優先電話は発信側が優先電話であれば優先措置が取られる(逆に受け側が優先電話でも優先措置は取られない)ので、受け側の病院が災害時優先電話である必要はない。しかし昨年の消防調査では災害時優先電話を使う消防本部が

 

       図3.3.1 災害時における医療施設側の通信メディア(複数回答)

3.3.2 災害時、消防側が救急搬送に利用するメディア(全国消防調査2005

58.7%なので、この間の通信に弱さがみられる。なお、その他の通信手段を使う施設が5.5%あったが、その多くは衛星携帯電話(予定も含めて)で、インマルサット、医師会のMCA無線、アマチュア無線などが、1か所ずつあった。

つぎに救急隊と医療施設の間だが、ここでも一般固定電話が72.2%と最も多く、ついで携帯電話の40.5%、災害時優先電話35.9%、ホットライン30.0%となっている。昨年の消防本部への調査ではこの部分が携帯電話に依存していることがわかったが、今回病院調査から、その相手である病院側は消防車の携帯との通話を一般固定電話や携帯電話、災害時優先電話を使って行っていることがわかった。救急隊からの連絡は固定電話ばかりでなく、直接医師等の携帯電話に行くことがあるのだろうか。あるいは消防にかけなおすときに医師の携帯電話が使われるのであろうか。

 一方、医療施設間の通信だが、ここでも一般の固定電話を使う割合が高くなっている(89)。そしてここでは32.1%の施設が災害時優先電話を使い、11.1%が防災行政無線を使うと答えている。これら災害時に強いメディアを使わない場合は、災害時病院間の通信が難しくなると考えられる。福岡県西方沖地震の際には、他の医療施設の状況がわからず、過剰な患者を受け入れざるを得なかった福岡済生会総合病院の例があったが、そうしたことを考えると、病院間の通信の弱さをいかに克服するかが、今後の課題といえるだろう。

 ところで、災害時の通信の利用状況は、病院の種類によって大きく異なっている。たとえば病院と消防本部との通信をみると、基幹災害拠点病院では63.6%が災害時優先電話を、27.3%が消防無線を、そして36.4%が防災行政無線を使っている。それに対して災害拠点病院の指定のない一般の救急病院では、災害時優先電話を使うのが42.0%、消防無線が1.2%,防災行政無線が21.0%と、災害に強い通信手段を使う割合が著しく低くなっている。そして地域災害拠点も、基幹災害拠点病院よりこれらの利用率が明らかに低くなっている。基幹・地域ともに、まずは災害拠点病院において、こうしたメディアを早急に配備することが必要である。そして二次医療施設については、特に大規模災害が切迫している地域から、順次こうしたメディアを導入していくことが重要であろう。

   図3.3.3 病院種類別、災害時利用メディア(消防本部―病院間)

 

通信上の問題

 以上のように、医療施設は、消防本部や救急隊、そしてなにより他の医療施設と、固定電話や携帯電話でやり取りし、それらに依存している。では、災害時に輻輳などで、これらが使えなくなったら、どうなるのであろうか。医療施設自身にたずねた。まず固定電話についてだが、89.0%の医療施設が、問題が生じるだろう、とし、問題は生じないだろうというのは、わずか7.6%に過ぎなかった。

3.2.4 固定電話の不通で問題は生じるか

 問題が生じるとした医療施設に、その内容をたずねると、「転送のための他病院との連絡ができない」(76.8)、「職員の招集ができない」(73.5)、「病院の被害状況が伝えられない」(73.0)、「病院の受け入れ患者数が伝えられない」(64.5)などが多くあげられた。医療機関としては、固定電話の不通により、消防本部ばかりでなく、他病院や職員への連絡に、不安を感じていることが明らかになった。

3.3.5 固定電話の普通で生じうる問題

 

 一方、携帯電話の不通による問題だが、こちらも79.7%と、多くの医療機関が、問題が生じるだろう、と答えている。

 

3.3.6 携帯電話の不通で問題は生じるか

 携帯電話の不通で生じる問題としては、「職員の招集ができない」(79.4)が最も多く、ついで「病院の被害状況が伝えられない」(67.7)、「転送のための他病院との連絡ができない」(62.4)、「病院の受け入れ患者数が伝えられない」(58.7)など、固定電話不通のときと似たような項目が挙げられている。

3.3.7 携帯電話の不通で生じうる問題

 次に実際災害にあって、問題が生じたかをたずねた。この十年のことをきいたところ、全体の27.8%は問題なかったとしているが、9.3%、災害にあった病院では約1/4が問題を経験している。

3.3.8 ここ10年、災害時に通信上の問題はあったか

 

 そこで起きた問題を具体的に尋ねたところ、「職員の招集ができない」(54.5)「病院の受け入れ患者数が伝えられない」(50.0)の二つが半数を超え、よく発生していることがわかった。災害発生時には、病院の医師、職員は自動的に参集するものと考えがちであるが、病院の情報伝達には職員の招集の問題が、意外と重要であるようである。また、その他としては、建物、水、電器、その他必要とする業者との連絡が取れず、復旧に時間がかかったとか、電話が電源を必要としていて、停電時に使用できない、などの問題も挙げられていた。

3.3.9 実際にあった通信上の問題

 

表 3.3.1 実際にあった通信上の問題(その他)

・救急隊の優先携帯電話が基地局破損により不通となり事前連絡なしの搬送となった(福岡圏沖地震)。・搬送患者数を告げられずに大量に搬送(ガルーダ機墜落)

・地域の情報が入手できない(給水支援)

・救急隊との連絡等

・正しい情報が入らない

・被害状況の把握ができない

・@建物、水、電器、その他必要とする業者との連絡が取れず、復旧に時間がかかるA最近の電話は電源を必要としてて停電時に使用できない(内線含む)

(中村功)

 3.4 都道府県の「広域災害・救急医療情報システム」

 

 ここでは各都道府県が運用している広域災害・救急医療情報システムを病院がどのように理解し、利用しているのかを検討する。まず確認であるが、わが国の救急医療情報システムには2つのタイプがある。ひとつは厚生労働省が運用する「広域災害救急医療情報システム」 EMIS)である。これは国のシステムであって、3.5で詳しく述べる。これとは別に、各都道府県が運用する「広域災害・救急医療情報システム」が存在する。厚労省の「広域災害救急医療情報システム」には「全国広域災害救急医療等リンクサイト」 が設けられており、現在、37都道府県がリンクされている。その他、市町村レベルにおいても、兵庫県西宮市は「西宮市救急医療情報システム」 運用し、このリンク集に収められている。

厚労省のシステムと都道府県のシステムの関係について、われわれが厚生労働省医政局指導課に照会したところ、元来、救急医療情報システムとは都道府県毎に別々に構築されてきた経緯があることが理解できた。上述のように国の「全国広域災害救急医療等リンクサイト」にリンクされている都道府県のシステムは37である。さらに、病院など医療機関の情報は、都道府県のシステムと国のシステムは別に入力されおり、都道府県のシステムとの情報そのもののリンクや交換や統合はない。つまり、都道府県のシステムでは都道府県毎に入力した情報のみが見られ、国のシステムは国に入力した情報のみが見られるということである。これでは、地震や津波など広域災害が発生した場合の広域支援体制の構築に資することにはならない。各県のシステムの情報は県に閉じていて、隣接する県からは見ることができない。厚生労働省からだけ各県の情報を見ることができることになっている。普段の救急搬送は県内で行われているので、それで十分だろうが、情報の観点から広域支援を行うには問題がある。また厚労省のシステムでは医療関係者向けの情報はIDとパスワードが必要となるが、リクエストがなければ市町村の消防本部や病院は利用することができない。

 以上、都道府県のシステムと国のシステムはホームページを閲覧するだけならば、リンクされているが、医療情報の共有という意味のリンクは全くなされていないというのが現状なのである。この矛盾をはらんだ両者のシステムの運用実態について、まず都道府県の運用するシステムについて見ていこう。

まず、都道府県「広域災害・救急医療情報システム」の導入状況に関して、全体では7割の病院が導入している。基幹災害拠点病院、地域災害拠点病院では8割以上導入されている。しかしながら、基幹災害拠点でも導入していない病院が13%もあるのは驚きである(図3.4.1)。地域災害拠点病院でも未導入が19%もある。それ以外の病院では導入は5割に満たない。未導入の病院があるのは、このシステム自体がまだ必須のものとなってはいないことの証左ともいえる。基幹災害拠点病院、地域災害拠点病院での導入をまずは促進し、平常時の広報・啓発活動によって一般の病院への普及を図っていく必要があろう。

 

 3.4.1 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」導入状況

 

導入している病院に対して、「広域災害・救急医療情報システム」が常時監視され、発動された場合、すぐに確認できるかどうかを尋ねたところ、「確実にすぐ確認できる」と回答したのは、全体の31%、基幹災害拠点病院でも42%である。「おそらく確認できるだろう」を含めても、全体の65%、基幹災害拠点病院でも79%である。システムのモニタリングのあり方には、設置場所や対応する要員など人の問題とアラートなど機械的なシステムの問題が関係しておこう。導入していても、発動を覚知しなければ宝の持ち腐れである。この点も今後の検討課題となる。

 3.4.2 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」の確認状況

 

 次にデータ入力の経験であるが、全体の56%、基幹災害拠点病院の63%、地域災害拠点病院の61%で入力経験があった。その他の病院では38%である。

 3.4.2 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」のデータ入力経験

 

 また、これまでの発動事案発生に際して、それを覚知したかどうか。どのような状況でどう対応したかを尋ねた(図3.4.3)。「発動に気づかず、入力しなかった」というのが、全体の18%、「院内が忙しく、入力しなかった」が11%あった。医療機関の位置づけにより日常業務が異なるため、それぞれの理由で覚知ができなかったり、入力の対応ができなかったりしている実情が窺える。「必要性を感じず、入力しなかった」も5%あり、病院側のシステム対応要員の判断能力も問われることを示唆している。「問題なく入力できた」という回答は、全体の31%であった。

 では、実施に都道府県「広域災害・救急医療情報システム」の情報をもとに患者の送受を行ったことがあるかを聞いたところ、経験ありは、全体の5%、基幹災害拠点病院の16%、地域災害拠点病院の2%、その他の病院では5%であった(図3.4.4)。システムの導入率とともに、実際の運用経験がまだまだ少ないことを示している。

 経験が少ないのであれば、いざというときのために訓練が必要である。全体の51%、基幹災害拠点病院の84%、地域災害拠点病院の53%、その他の病院では32%であった(図3.4.5)。地域災害拠点病院、その他の病院での訓練実施が低いのが気がかりなところである。

都道府県「広域災害・救急医療情報システム」への評価であるが、「非常に役立つと思う」と回答したのは、全体の20%、基幹災害拠点病院の16%、地域災害拠点病院の16%、その他の病院では27%であった(図3.4.6)。「やや役立つと思う」は全体の48%、基幹災害拠点病院の63%、地域災害拠点病院の48%、その他の病院では43%であった。まとめると肯定的な評価をしているのは、全体の68%、基幹災害拠点病院の78%、地域災害拠点病院の64%、その他の病院では70%であった。「全く役に立たない」という厳しい評価も5%以下ではあるが存在する。後述の厚労省のシステムと合わせて、国と都道府県のシステムの本質的な統合が求められるところであり、それが実現しないとシステムへの信頼醸成や有効性の認識にはつながらないであろう。

 3.4.3 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」の問題点(複数回答)[N=164]

 3.4.4 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」の患者送受の経験

 

 3.4.5 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」の定期的な運用訓練

 

3.4.6 都道府県「広域災害・救急医療情報システム」への評価

 

(森康俊)

3.5 厚生労働省の「広域災害救急医療情報システム」

 

ふだんの都道府県・市町村の自治体単位内で処理される自然災害や、大規模事故の場合には都道府県単位の「広域災害・救急医療情報システム」によってもこれまで十分に救急搬送の協力や情報通信がなされてきた。しかしながら、大規模な災害が発生した場合、ふだんの都道府県・市町村の自治体の単位、消防本部・医療機関等の担当区域を超えた、救急搬送や情報ネットワークが必要となる。つまり、県を超えた隣り合う県同士の救急搬送や、支援の仕組みが必要となるのである。そのために、都道府県単位の「広域災害・救急医療情報システム」とは別に、厚生労働省による「広域災害救急医療情報システム」が1995年に立ち上げられた。このシステムは、阪神淡路大震災における救急活動に対する教訓から1995年に構築され、現在42の都道府県で導入されている。1998年にインターネットのWebシステム機能を拡張、一般のコンピュータでも使用できるシステムとなった。2002年には、災害時のバックアップ機能を強化するために、広域災害バックアップセンターとして、東センター、西センターの2つのセンターからなる相互バックアップシステムを構築した。この「広域災害救急医療情報システム」は、以上のような経緯で誕生し、大規模な広域災害の発生時における被災者の救助、救援が期待されているが、現在、災害時における同システムの運用に関して問題が指摘されている。

3.5.1 広域災害救急医療情報システム(厚生労働省HPより)

 

具体的な事例を挙げると、20041023日に発生した新潟県中越地震では、通信回線の途絶や停電により、被災地の病院が「広域災害・救急医療情報システム」を利用できず、被災者の搬送に全く活用されなかったことが報道されている(「読売新聞」20041123日火曜日東京版朝刊1面)。この報道によれば、被災地の病院では、通信回線や電気に関する病院施設自体の被害も大きく、被災者の救急対応に追われていたため、24日夕方までほぼ1日間の間、システムに情報を入力することができなかったという。大地震という本格的な自然災害で、このシステムの重要な問題が発覚したといえる。この問題は都道府県単位の「広域災害・救急医療情報システム」において発生した問題であるが、その後、中村・福田(2006)2005年1月に全国の消防本部を対象に実施した調査によれば、新潟県中越地震の際に、厚生労働省の「広域災害救急医療情報システム」にデータを入出力した消防本部はたった1つしかなかったことが明らかとなった。つまり、新潟県中越地震においては、通信回線や電気の途絶によって都道府県単位の「広域災害・救急医療情報システム」も使用不能であったが、それを補うべく国家単位で構築されている厚生労働省の「広域災害救急医療情報システム」も使用されず、被災者の救急搬送には全く活用されなかったのである。

3.5.2 新潟県中越地震における広域災害救急医療情報システムの報道

(「読売新聞」20041123日火曜日東京版朝刊1面)

 

この「広域災害救急医療情報システム」について、全国の救急病院と消防機関の間では、どのような状況があるのだろうか。ここからこの「広域災害救急医療情報システム」の利用実態について検証する。昨年の消防本部調査の結果、システムが導入されている消防本部は全体の38.7%で、導入されていない消防本部がまだ6割もあることがわかった。このシステムは全国的に見ればまだ導入途中段階にあるといえるが、今回の病院調査ではどのような結果となったか、今回の調査対象である237の病院のうち、基幹災害拠点病院(N=22)、地域災害拠点病院(N=128)、指定なし救急病院(N=81)の別にこれから考察したい。

 

3.5.3 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」の導入状況

 

 各種救急病院における、厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」の導入状況を示したのが図3.5.3である。これをみると、全体では導入して、そのシステムのパスワードを取得している病院が37.6%、導入していない病院が38.8%、「国のシステムは聞いたこともない」という病院が11%もあることが明らかとなった。6割を超える救急病院が未だにこのシステムを導入していない。これは救急病院の指定レベルによって大きな差があり、図3.5.3からわかるように、基幹災害拠点病院の72.7%がこのシステムを導入しているにも関わらず、地域災害拠点病院では導入率53.9%、指定なし救急病院では2.5%という導入率の低さであった。今後、地域災害拠点病院や指定なし救急病院でのシステム導入が促進される必要があることが明らかとなった。

 それでは、続いてこの厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」を導入している89の救急病院を対象に行った質問について考察する。このシステムを導入している病院では、このシステムを利用できる端末をどこに設置しているかを示したのが図3.5.4である。これを見ると、全体の56.2%が病院事務室に端末があることがわかる。ナースステーションに端末がある病院が10.1%、警備員室に端末がある病院が3.4%で、その他の場所に端末がある病院が29.2%ある。地域災害拠点病院の約6割の端末が病院事務室にあるが、基幹災害拠点病院の約6割の端末がその他の場所にあることがわかる。ここでいうその他の場所とは、自由回答を見ると、救命救急センター、救急外来、医局などに設置されているケースが多いことがわかった。

3.5.4 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」の設置場所

 

 また、このシステムが常時監視されていて発動がすぐに確認できる状態にあるかどうかを示したのが図3.5.5である。このグラフを見ると、全体の29.2%が「確実にすぐに確認できるだろう」、40.4%が「おそらく、すぐに確認できるだろう」と認識しているが、その反面で20.2%が「すぐには確認できないかもしれない」、9%が「すぐには確認できないだろう」と回答している。約3割の救急病院が、このシステムの常時監視、発動の確認に問題を抱えていることがわかる。言うまでもなく、このシステムの使用は一刻を争うものであり、災害発生時にはすぐに確認される体制の確立が必要である。

3.5.5 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」の確認状況

 続いて、このシステムを導入している病院がどの程度データ入力をしたことがあるかを示したのが図3.5.6である。このグラフを見ると、システム導入している病院全体の66.3%がデータ入力を経験済みであるが、32.6%が導入後もデータ入力の経験がないことがわかる。基幹災害拠点病院のデータ入力経験率は81.3%と非常に高いが、地域災害拠点病院では未だにデータ入力を経験している病院が62.3%と未だに低いことがわかる。

3.5.6 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」へのデータ入力経験

3.5.7 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」へデータ入力した災害(複数回答)

 続いて、このシステムへのデータ入力を経験したことがある59の救急病院を対象に、これまでデータ入力したケースが何であったかを示したのが図3.5.7である。このグラフは百分率ではなく、データを度数で示している。これを見ると、新潟県中越地震でデータ入力した救急病院が45箇所、福岡県西方沖地震でデータ入力した救急病院が22箇所、JR尼崎列車事故でデータ入力した救急病院が23箇所、平成16年台風23号で7箇所ある。その他には、自由回答で、宮城県沖地震、宮城県北部地震などが挙げられていた。このように、最近の災害では、システムを導入済みの救急病院だけを見ると、データ入力の状況は少しずつ進みつつあることが明らかとなった。

3.5.8 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」の問題点(複数回答)

 

 また、この厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」を導入している89の救急病院を対象に、そのシステムの問題点についてたずねたところ、図3.5.8のような結果が得られた。「特に問題なく、入力できた」病院が40.4%ともっとも多かったが、「発動に気づかず、入力しなかった」病院も30.3%あることがわかった。「必要性を感じず、入力しなかった」病院は9.0%、「院内が忙しく、入力しなかった」病院が4.5%、「操作方法がわからなかった」病院が1.1%、「通信回線が切れてアクセスできなかった」病院が1.1%と、問題が発生した病院も存在することがわかる。このシステムの問題点がここに現れているといえる。このシステムが上手く機能しない場合の病院側の要因として、病院側が「発動に気づかず、入力しない」ケース、「必要性を感じず、入力しない」ケース、「院内が忙しく、入力できない」ケース、「操作方法がわからない」ケース、「通信回線が切れてアクセスできない」ケース等が考えられる。これらの問題をクリアするための方策を検討しなければならない。そのためには、広域災害救急医療情報システムの発動がわからないような状態を作らないこと、発動したら全ての救急病院にその発動が伝わるシステムを構築することが必要である。また、発動されたら入力を要求されている救急病院が必ず情報入力することができる体勢づくりが必要である。災害の発生時には院内が忙しくなるのは当たり前のことであり、それでも情報入力されるようにするためには、災害発生時の情報入力担当者を決めておくべきである。また、このシステムの利用方法、情報の入力方法がよくわかるマニュアルが作成され、現場でも周知徹底されている必要がある。こういう現場での対応が必要不可欠である。

 図3.5.9のように、広域災害救急医療情報システムを導入している救急病院でも、このシステムを使った患者搬送を行ったことがある病院は皆無であった。データの入力を行った経験はあるが、このシステムを利用した救急搬送の実績は全くないのである。厚生労働省が構築したこのシステムは、昨年の消防本部調査でも実績の全くない現状が明らかとなったが、病院側にとっても、未だ実績は皆無であることが明らかとなった。

3.5.9 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」による患者搬送の経験

 

 では、搬送の実績はない状態であるが、実際の救急搬送が発生する事態に備えて、広域災害救急医療情報システムの運用訓練はどれくらい行われているのだろうか。図3.5.10を見ると、このシステムを導入している救急病院の53.9%が、定期的に運用訓練を行っていることがわかる。グラフのように、基幹災害拠点病院の75%は訓練を行っているが、地域災害拠点病院では、訓練を行っている割合は46.4%と低い傾向が見られた。ここでも、地域災害拠点病院での対応の遅れが見られる。

3.5.10 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」の定期的な運用訓練

 

 このシステムを実際に導入している救急病院が、このシステムをどのように評価しているかを示したのが、図3.5.11である。全体で見ると、このシステムが「非常に役に立つと思う」病院は14.5%、「やや役に立つと思う」病院は55.1%と、約7割の病院がこのシステムを評価していることがわかる。しかしながら、25.8%の病院が「あまり役に立たないと思う」と感じている実態も憂慮すべきである。

3.5.11 厚生労働省「広域災害救急医療情報システム」への評価

(福田充)


3.6 病院の災害対応

3.6.1 病院間の連携、情報共有をどうすべきか

 2.3.4で病院の災害対策が不十分であることをヒアリングした。それが実態としてはどうなのかを本アンケート調査で検討した。「地域内の病院が連携し、収容や転送の計画をたてておくべき」「災害時に病院間の確実な連絡がとれるホットラインを整備すべき」「他地域の病院と連携し、収容や転送の計画をたてておくべき」と、地域内外の病院の連携を求める回答が非常に多い。

特に、災害拠点病院ではない病院で、「災害時に病院館の確実な連絡がとれるホットラインを整備すべき」「消防保有の受入可能情報を各病院からも見えるようにすべき」との回答が多いが、これは災害時に重傷患者が運び込まれたときに、本来ならば、病院間で連携して治療可能な病院に即座に転送措置をとるべきであるが、現実には、一旦消防を経由しなければならないことへの問題意識の表れである。

災害拠点病院では「地域内の病院が連携し、収容や転送の計画をたてておくべき」「他地域の病院と連携し、収容や転送の計画をたてておくべき」との回答が非常に多く、災害拠点病院ではない病院で、この種の回答が少ない。これは、災害拠点病院で、日常の収容や転送が消防を経由してのみ行われている現状から、このことに強く問題意識を持っていることの現われであろう。

 「こうした問題の解決は消防に任せるのが現状だと思う」との回答が非常に少ないことがその証左である。

3.6.1 大災害時にある病院に患者が集中し、医療活動が不十分になることについてどう思うか

3.6.2 病院の災害対策

 次に病院自体の災害対策をみていく。

(1)耐震化・医薬品・医療器具の備蓄・供給

 災害拠点病院でも、病院の「建物の耐震化」は100%ではない。2割の基幹災害拠点病院が耐震化を行っていないと答えている。全体でも調査対象の約3割の病院で耐震化がなされていない。病院に限らず、災害拠点の耐震化は人の命を守る上で最低限の準備であるためこれは改善されなければならない。ヘリポートに関しては、基幹災害拠点病院においては7割に達するが、地域災害拠点病院では設置してある病院は少ない。

 すなわち地震時を考えたばあい、「基幹災害拠点病院」のうち8割、地域災害拠点病院のうち7割しか機能せず、また多くの病院で、ヘリポートが使えず孤立するのである。これらは相即改善すべきであろう。

 医薬品・医療器具の備蓄に関しては、基幹災害拠点病院でも100%ではない。地域災害拠点病院となると3割の病院が「備蓄を行っていない」とこたえている。医薬品・医療器具の供給に関する協定締結を行っている病院も約半数でしかない。また、医薬品・医療器具が備蓄されておらず、時間がたつにつれこれらが不足し、かつこれらが供給されない可能性が高い病院も多いといえる。これらも順次改善していかなくてはならない。

 

 

3.6.2 防災対策@設備、医薬品・医療器具の供給

(2)自家発電装置、電話の電源、PC転倒防止

 次に電源系統の防災対策をみていく。自家発電装置については、手術や高度医療を行う病院においては、設置率は非常に高い。だが、地域災害拠点病院をみると100%ではない。災害拠点病院に指定されていない病院だと7割弱にとどまっている。

 電話交換機の停電対策も100%ではない。災害拠点病院でも8割前後にとどまっている。災害時に停電して、内線電話が使用不可能になる病院が2割以上あるということである。コンピュータサーバの転倒防止対策も100%ではない。基幹災害拠点病院で8割弱、地域災害拠点病院で6割程度である。電子カルテなど病院の情報化が進んでいる現状においては、これは非常に不備があるといえよう。

これらは簡単な手間でできることなので、担当者の意識・関心の問題である。今後啓発活動などにより、徹底することが求められる。

 

 

 

 

3.6.3 防災対策A非常用電源およびPCの耐震化

 

3.6.3   病院の防災時の通信 

 防災無線の設置については、基幹災害拠点病院においては8割弱、地域災害拠点病院においては6割弱である。指定されていない病院では3割を切っている。

災害時優先電話を設置していない病院も多い。基幹災害拠点病院、地域災害拠点病院で、2割が設置していない。これは周知度の問題と思われるので、相即、これらの改善が求められる。より重要な問題としては、災害時優先電話が設置してあったとしても、それが周知されている病院としては、全体の約半数であることだ。災害時に、優先電話を用いて連絡を行う病院が約半数ということは非常に大きな問題である。また衛星携帯電話・ホットラインを設置している病院は基幹災害拠点病院で約半数、地域災害拠点病院がこれより若干低い数値となっている。

医師・看護士は、「医療」の専門家である。たとえ「災害医療の専門家」であっても、「災害時の通信」については知識が少ないのではないだろうか。災害時優先電話の指定やこの周知などは、担当者にその知識さえあればできることなので、この医療の専門家に対する災害時通信の重要性の啓蒙活動は重要であろう。

3.6.4 防災対策B防災に関連する通信

 

3.6.4   職員の参集基準・連携体制

 医師・職員の参集基準は基幹災害拠点病院で95分、地域災害拠点病院で医師に関して7割、職員について8割である。もっとも、職業倫理として、基準などなくても、参集する医師・職員は多いであろうが、連絡体制や参集基準といったものは、組織としては整備しておくべきものである。災害時に対応が求められている組織である以上、この整備は十分とはいえない。今後改善していくべきである。

 また、患者転送に関する連携体制を確立しているという病院は全体として2割前後であった。これも、今後すすめられるべき項目であろう。

 

 

3.6.5 防災対策C防災に関連する参集基準・連携

(関谷直也)


3.7 調査まとめ

・病院を中心に見た通信手段は、平常時・災害時とも、一般の固定電話が中心で、それを補うメディアとして携帯電話やホットライン、災害時優先電話が存在するという状況である。とくに病院間の通信は固定電話に依存しがちである。

・災害時は災害拠点病院では固定電話以外の多様な手段を想定する傾向が見られる。

・平常時、病院が多く感じている問題点は、「受け入れてみたら、状況が事前の話と異なり、困ることがある」がもっとも高く、続いて「他の救急病院の状況がわからないので、受け入れるべきか否か迷うことがある」があった。

・災害時に、固定電話や携帯電話が不通になると、ほとんどの病院で問題が発生すると想定している。

・災害を体験した病院に、固定電話・携帯電話の不通で生じた問題をたずねたところ、「職員の招集ができない」を筆頭に、「病院の被害状況が伝えられない」「転送のための他病院との連絡ができない」「病院の受け入れ患者数が伝えられない」などが多く挙げられていた。これらをどうかバーするのかが、課題となる。

・救急病院の多くは「救急医療情報システム」を利用していた。

・基幹災害拠点病院では、救急外来やセンター、医局にシステム端末を設置し、医師や看護士が入力しているが、他の病院では病院事務室にシステム端末を設置し、事務職が入力していることが多い。受け入れ可能数の決定に、高度の判断が必要だとすれば、前者のほうが望ましい。

・災害時の搬送をささえる広域医療情報システムは、都道府県のシステムは導入が進んでいるが、国のシステムは遅れぎみである。平常時にも行なわれる県内の搬送体制は整っているが、大災害の時に行なわれる、県をまたいだ搬送体制はまだ十分ではないといえる。

・病院の意見として多くあがったのは、「災害時に、他の病院の受け入れ状況がわかる、ホットラインのようなものを整備すべきだ」「消防がネットワークで集めた、他病院の受け入れ可能状況を、各病院からも見えるようにするべきだ」「日頃から地域内の病院が連携し、収容や転送の計画を立てておくべきだ」といった、病院間のコミュニケーションの重要性であった。

 


4.提言

 本論では、災害時の救急搬送における情報システムについて、その現状と課題を検討するために、@主要都市の救急病院に対するアンケート調査、およびAJR福知山線脱線事故に対応した尼崎市消防局、福岡県西方沖地震を経験した福岡市消防局、都内災害拠点病院等へのヒアリング調査を行った。

 その結果、災害医療において、重要通信が固定電話や携帯電話音声といった、輻輳に弱い公衆網に依存している問題が明らかになった。

  総合的な対策としては、@災害に強い通信手段を確保すること、A通信が不通のときでも最低のパーフォーマンスを確保するための計画を策定しておくこと、B災害時に使うシステムは通常時から使用するようにすること。またそのために普段からそのシステムを利用するメリットを確保すること、などが考えられるべきである。

 そうした中で、通信の側で行えることとして、さしあたり次のことを提言し、本章を終わることとしたい。

 

1.救急車の携帯電話を災害時優先電話にすること

 福岡県西方沖地震の例に見られるように、災害時は消防局の指令センターが混乱し、結果として救急車の携帯電話と病院との連絡が生命線となることが多い。したがってそこで使われる携帯電話は、少なくとも災害時優先電話でなくてはならない。しかし総務省によると、全国の消防局で優先電話となっているのは少数派という。現在NTTドコモでは、災害時の通話の確保のために、災害時優先電話を防災機関の契約台数の2割までに制限している。災害時優先電話を誰が持つべきかの優先順位を見直すなどして、命に関わる部分に優先的に指定することが重要である。

 

2.病院に輻輳に強い無線を導入すること

 そうはいっても、命に関わる重要通信を携帯電話だけに頼るわけにはいかない。救急病院には、防災無線や消防無線あるいはMCA無線等を導入するなどして、消防当局との通信が公衆網に依存していることから脱却する努力が必要である。現在、東京や大阪など大都市では、災害拠点病院に防災行政無線を設置している。しかし総務省によれば、病院やライフラインに入れる「地域防災無線」の整備率は、全国でまだ10.9%(200512月現在)にすぎない。

 

3.病院間のコミュニケーションを確保すること

 これまで消防と救急病院間の通信については注目されてきたが、これまで救急病院間の連絡については見落されてきた観がある。しかし福岡の例に見られるように、ある救急病院にとって、他の病院の受け入れ状況がわからないと、どこまで無理をして受け入れるべきかの判断がつかなくなってしまう。病院アンケートからも、災害時に困った経験として、「転送のための他病院との連絡ができない」をあげる病院が多く、また「災害時に、他の病院の受け入れ状況がわかる、ホットラインのようなものを整備すべきだ」との意見も多かった。このように病院間のコミュニケーションを確保することが重要である。しかし、「救急医療情報システム」にしても、消防は各病院の状況を見ることができるが、病院相互は情報を見ることができない。したがって現状としては、病院間の通信は、一般の固定電話に依存しているという状態である。病院間の通信は通常時の救急医療の質を高めることにもなるので、何らかの形で新しいメディアを整備する必要があろう。

 

4.病院職員の安否確認および招集ツールを整備すること

 病院アンケートで、災害時に経験した通信の問題として、最も多くあげられたのが「職員の招集ができない」であった。災害時には限られた職員に対して大量の患者が発生するため、非番の職員の招集が必須である。しかし大都市では通勤距離が長くなり、職員の招集もままならない。そこで病院と職員とのコミュニケーションが大事なのだが、携帯電話の輻輳でうまくゆかないのが現状である。

 福岡市の医師会では、携帯メールと携帯ウェブを使った、医師の安否情報システムを運用しているが、こうした職員の安否確認(=出勤可能状況の確認)や招集については、espressoなど、比較的つながりやすいパケット通信を利用して、新たなシステムを作ることが有効かもしれない。

(中村功)

 

(本論は、2005年度NTTドコモモバイル社会研究所委託研究「災害時における携帯メディアの問題点」の研究成果の一部である。)



救急医療と通信システムに関するアンケート調査

 

調査主体:

東洋大学社会学部中村功研究室

 

112-0001東京都文京区白山5-28-20

実施機関:

株式会社サーベイリサーチセンター

 

0120-380-641(担当:中島・佐藤)

 

 

 


z  ご記入は、貴施設の救急医療部門の責任者の方にお願い致します。

z  はひとつ)(はいくつでも)など、お答えの方法を指定させて頂いておりますので、あてはまる回答項目の番号を囲んで下さい。

z  「その他(    )」にあてはまる場合には、ご面倒でも詳しくご記入下さい。

z  質問番号順にお答え下さい。質問の中には、一部の方だけにお尋ねする部分もありますが、その場合は指定された方のみご回答下さい。

z  回答は、すべてコンピューターによって集計・解析し、数字で発表しますので、ご回答頂いた医療施設の方にご迷惑をかけることは決してありません。

z  ご回答は、誠に恐縮ですが220日(月)までに、ご記入の上、同封の返信用封筒に入れご返送下さい。

 

貴医療施設についてご記入下さい。

貴医療施設の名称:

 

許可病床数:

( 平均348.3 ) 床      (N=228)

災害拠点病院の指定:

1.基幹災害拠点病院 9.3

2.地域災害拠点病院 54.0

3.指定なし 34.2

 

無回答        2.5     (N=237)

ご回答者 氏名:

 

 

平常時の救急搬送の現状についてお聞きします

問1        平常時、救急患者受け入れ可能状況の伝達のために、貴施設では、主にどのような通信手段を利用していますか。以下の1)〜3のそれぞれについてお答え下さい。

 

1)消防本部と貴施設との間(○はいくつでも)                       (N=237)

1.一般の固定電話  1.9

4.防災行政無線   8.4

7.コンピュータネットワークシステム27.4

2.災害時優先電話 20.3

5.携帯電話    20.7

8.その他(具体的に       )  4.2

3.消防無線     3.8

6.ホットライン  36.7

 

 

 

2)救急隊と貴施設との間(○はいくつでも)                  (N=237)

1.一般の固定電話71.3  

4.防災行政無線   1.7

7.コンピュータネットワークシステム12.2

2.災害時優先電話13.5  

5.携帯電話    37.6

8.その他(具体的に        )  5.1

3.消防無線     3.4

6.ホットライン  36.3

9.両者は直接連絡しない       0.8

 

3)貴施設と他の救急病院との間(○はいくつでも)                      (N=237)

1.一般の固定電話 95.4

4.防災行政無線   4.2

7.コンピュータネットワークシステム 9.7

2.災害時優先電話 10.5

5.携帯電話    15.2

8.その他(具体的に      )  1.3

3.消防無線     0.4

6.ホットライン   5.9

9.両者は直接連絡しない      1.3

問2        貴施設では、平常時の救急搬送について次のような問題はありますか。(○はいくつでも) (N=237)

1.他の救急病院の状況がわからないので、受け入れるべきか否か迷うことがある    26.2

2.コンピュータシステムに受け入れ可能状況を入力するのが遅れがちになる      15.6

3.コンピュータシステムはあるが、実際は使われていない              13.1

4.消防本部との連絡がスムーズにできないことがある                 8.9

5.受け入れてみたら、状況が事前の話と異なり、困ることがある           56.5

6.その他(具体的に                   )            6.8

7.とくに問題はない                               24.1

無回答                                      0.8

 

災害時の通信についてお聞きします

問3        災害時、患者受け入れの伝達のために、貴施設では、主にどのような通信手段を利用しますか。以下の1)〜3のそれぞれについてお答え下さい。

 

1)消防本部と貴施設との間(○はいくつでも)                       (N=237)

1.一般の固定電話 82.7

4.防災行政無線  25.3

7.コンピュータネットワークシステム 27.8

2.災害時優先電話 45.6

5.携帯電話    32.1

8.その他(具体的に        )  5.5

3.消防無線     6.8

6.ホットライン  32.9

無回答               0.4

 

2)救急隊と貴施設との間(○はいくつでも)                        (N=237)

1.一般の固定電話 72.2

4.防災行政無線  10.1

7.コンピュータネットワークシステム13.5

2.災害時優先電話 35.9

5.携帯電話    40.5

8.その他(具体的に        )  6.3

3.消防無線     5.1

6.ホットライン  30.0

9.両者は直接連絡しない       1.7

 

 

無回答               3.0

 

3)貴施設と他の救急病院との間(○はいくつでも)                     (N=237)

1.一般の固定電話 89.0

4.防災行政無線  11.0

7.コンピュータネットワークシステム14.3

2.災害時優先電話 32.1

5.携帯電話    25.7

8.その他(具体的に        )  4.6

3.消防無線     1.3

6.ホットライン   6.3

9.両者は直接連絡しない       2.1

 

 

無回答               1.3

 

問4        大災害時、電話や携帯電話がつながらないとき、貴施設では、救急搬送に何か問題は生じますか。

 

1)固定電話の不通で(○はひとつだけ)                         (N=237)

1.問題は生じないだろう   7.6

2.問題が生じるだろう   89.0

無回答    3.4

 

(問41)で「問題が生じるだろう」とお答えになった方におうかがいします)

付問41 固定電話がつながらないとき、発生すると思われる問題は何ですか。(○はいくつでも) (N=211)

1.病院の被害状況が伝えられない     73.0

5.職員の招集ができない       73.5

2.病院の受け入れ可能患者数が伝えられない64.5

6.医薬品・医療器具の補充ができない  54.5

3.転送のための他病院との連絡ができない 76.8

7.その他(具体的に        )  3.3

4.ヘリコプターの要請ができない     30.8

無回答                4.3

 

 

2)携帯電話の不通で(○はひとつだけ)                         (N=237)

1.問題は生じないだろう  10.5

2.問題が生じるだろう   79.7

無回答        9.7

 

(問42)で「問題が生じるだろう」とお答えになった方におうかがいします)

付問42 携帯電話がつながらないとき、発生すると思われる問題は何ですか。(○はいくでも) (N=189)

1.病院の被害状況が伝えられない     67.7

5.職員の招集ができない       79.4

2.病院の受け入れ可能患者数が伝えられない 58.7

6.医薬品・医療器具の補充ができない 46.0

3.転送のための他病院との連絡ができない 62.4

7.その他(具体的に        )  5.3

4.ヘリコプターの要請ができない     28.0

無回答               2.6

 

問5        ここ10年間で発生した災害時に、貴施設では、通信上の問題が起きたことはありますか。     (○はひとつだけ)                   (N=237)

1.問題があった

2.問題はなかった

3ここ10年で大きな災害は経験していない

無回答

9.3

27.8

61.2

1.7

 

(問5で「問題があった」とお答えになった方におうかがいします)

付問5 災害時に実際にどのような問題を経験しましたか。(○はいくつでも)(N=22)        

1.病院の被害状況が伝えられない      36.4

5.職員の招集ができない      54.5

2.病院の受け入れ可能患者数が伝えられない 50.0

6.医薬品・医療器具の補充ができない 18.2

3.転送のための他病院との連絡ができない  40.9

7.その他(具体的に      )  27.3

4.ヘリコプターの要請ができない       4.5

 

 

平常時の救急医療情報システムについてお聞きします

次に、平常時の救急搬送のために、患者受け入れ可能数などを伝える、救急医療情報システム(都道府県単位のもの)についてお聞きします。

問6        貴施設では、こうした「救急医療情報システム」を導入していますか(○はひとつだけ) (N=237)

1.導入している    80.2

2.導入していない   18.1

無回答        1.7

(問7〜問12は、問6でこのシステムを「導入している」とお答えになった方におうかがいします)

問7        貴施設では、「救急医療情報システム」の端末はどこに置いていますか(○はひとつだけ) (N=190)

1.ナースステーション

2.警備員室

3.病院事務室

4.その他(具体的に        )

12.1

5.8

48.9

33.2  

 

問8        「救急医療情報システム」は常時監視され、すぐに発動が確認できる状況になっていますか。    (○はひとつだけ)                 (N=190)

1.確実にすぐに確認できるだろう   38.9

3.すぐには確認できないかもしれない 18.9

2.おそらく、すぐに確認できるだろう 31.6

4.すぐには確認できないだろう     8.9

 

無回答                1.6

 

問9        救急医療情報システム」の入力はどなたが担当していますか。(○はいくつでも)    (N=190)

1.医師

2.事務職

3.看護士

4.警備員

5.担当者はいない

6.その他(       )

21.1

69.5

21.6

5.8

3.2

4.2

 

問10     「救急医療情報システム」はどの程度の頻度で更新していますか。(○はひとつだけ)   (N=190)

1ほとんど更新しない19.5

3一日34程度13.7

5一日7回以上     1.6

2日に12程度 62.6

4一日に56回程度 2.1

無回答           0.5

 

問11     「救急医療情報システム」の利用で今までに次のような経験はありますか(○はいくつでも) (N=190)

1.院内が忙しく、入力しなかった

35.3

2.担当者が不確定で、入力しなかった

18.9

3.必要性を感じず、入力しなかった

12.6

4.他の救急病院の状況がわからないので、受け入れるべきか否か迷うことがある

5.3

5.コンピュータシステムに受け入れ可能状況を入力するのが遅れがちになる

24.2

6.コンピュータシステムはあるが、実際は使われていない

11.1

7.消防本部との連絡がスムーズにできないことがある

5.8

8.受け入れてみたら、状況が事前の話と異なり、困ることがある

19.5

9.更新が遅れて、消防から電話がかかってくる

13.7

10.その他(具体的に                          )

6.8

11.とくに問題はない

21.1

無回答

3.2

 

問12     あなたは「救急医療情報システム」についてどのように評価していますか。はひとつだけ)                            (N=190)

1.非常に役に立つと思う       21.6

3.あまり役に立たないと思う     31.1

2.やや役に立つと思う        41.1

4.全く役に立たないと思う       5.8

 

無回答                0.5

 

都道府県の「広域災害・救急医療情報システム」についてお聞きします

災害時の搬送をスムーズに行うために、各都道府県では「広域災害・救急医療情報システム」を整備しています。以下、問13から問19では、そのシステムについてお聞きします。

問13     貴施設では、都道府県の「広域災害・救急医療情報システム」を導入していますか。          はひとつだけ)                                 (N=237)

1.導入している    69.2

2.導入していない   30.0

無回答         0.8

 

(問14〜問19は、問13でこのシステムを「導入している」とお答えになった方におうかがいします)

問14     「広域災害・救急医療情報システム」は常時監視され、すぐに発動が確認できる状況になっていますか。はひとつだけ)                               (N=164)

1.確実にすぐに確認できるだろう   31.1

3.すぐには確認できないかもしれない 23.2

2.おそらく、すぐに確認できるだろう 33.5

4.すぐには確認できないだろう    11.6

 

無回答                0.6

 

問15     貴施設では、これまで実際のケースで「広域災害・救急医療情報システム」のデータを入出力したことがありますか。(○はひとつだけ)                         (N=164)

1.ある        56.1

2.ない        42.1

無回答        1.8

 

問16     これまで「広域災害・救急医療情報システム」が発動された際、貴施設では次のような問題点はありましたか。はいくつでも)                            (N=164)

1.発動に気づかず、入力しなかった 18.3

6.通信回線が切れてアクセスできなかった1.2

2.院内が忙しく、入力しなかった   7.3

7.その他(具体的に         )4.3

3.必要性を感じず、入力しなかった  4.9

8.とくに問題なく、入力できた     31.1

4.操作方法がわからなかった     1.2

9.これまで発動されたことはないと思う 28.0

5.停電でシステムが動かなかった    -

無回答               12.8

 

 

問17     貴施設では、今まで「広域災害・救急医療情報システム」の情報をもとに患者の送受を行ったことがありますか。(○はひとつだけ)                           (N=164)

1.行なったことがある(具体例  )4.9

2.行なったことはない 93.9

無回答  1.2

 

問18     貴施設では「広域災害・救急医療情報システム」運用の訓練を定期的に行っていますか。      (○はひとつだけ)                                 (N=164)

1.行なっている    51.2

2.行なったことはない 47.6

無回答        1.2

 

問19     あなたは都道府県の「広域災害・救急医療情報システム」についてどのように評価していますか。  はひとつだけ)(N=164)                                 

1.非常に役に立つと思う       19.5

3.あまり役に立たないと思う     27.4

2.やや役に立つと思う        48.2

4.全く役に立たないと思う       3.7

 

無回答                1.2

 

厚生労働省の「広域災害救急医療情報システム」についてお聞きします

都道府県のシステムとは別に、厚生労働省では「広域災害救急医療情報システム」を整備しています。以下、問20から問27では、このシステムについてお聞きします。

問20     貴施設では、厚生労働省の「広域災害救急医療情報システム」を導入(パスワードを取得)していますか。はひとつだけ)                              (N=237)

1.導入している         37.6

3.都道府県のシステムと区別がつかない11.4

2.導入していない  38.8

4.国のシステムのことは聞いたこともない11.0

 

無回答                 1.3

 

(問21〜問27は、問20でこのシステムを「導入している」とお答えになった方におうかがいします)

問21     貴施設では、国の「広域災害救急医療情報システム」の端末はどこに置いていますか。       (○はひとつだけ) (N=89)                                

1.ナースステーション10.1

2.警備員室3.4

3.病院事務室56.2

4.その他(具体的に  )29.2

無回答1.1

問22     国の「広域災害救急医療情報システム」は常時監視され、すぐに発動が確認できる状況になっていますか。(○はひとつだけ)                  (N=89)

1確実にすぐに確認できるだろう   29.2

3すぐには確認できないかもしれない 20.2

2おそらく、すぐに確認できるだろう 40.4

4すぐには確認できないだろう     9.0

 

無回答                1.1

 

問23     貴施設では、これまで実際のケースで国の「広域災害救急医療情報システム」のデータを入出力したことがありますか。(○はひとつだけ)                        (N=89)

1.ある        66.3

2.ない        32.6

無回答        1.1

 

(問23で「ある」とお答えになった方におうかがいします)

付問23-1 それはどのケースでしたかはいくつでも)                  (N=59)

1新潟県中越地震6.3

3福岡県西方沖地震7.3

5その他の災害・大規模事故(具体的に)16.9

2平成16年台2311.9

4JR尼崎列車事故39.0

無回答3.4

 

問24     今まで何回か、国の「広域災害救急医療情報システム」が発動されていますが、そのとき貴施設では次のような問題点はありましたか。はいくつでも)                 (N=89)

1.発動に気づかず、入力しなかった  30.3

5.停電でシステムが動かなかった    -

2.院内が忙しく、入力しなかった   4.5

6.通信回線が切れてアクセスできなかった1.1

3.必要性を感じず、入力しなかった  9.0

7.その他(具体的に         )11.2

4.操作方法がわからなかった     1.1

8.とくに問題なく、入力できた     40.4

 

無回答                13.5

 

問25     貴施設では、今まで国の「広域災害救急医療情報システム」の情報をもとに患者の送受を行ったことがありますか。(○はひとつだけ)                          (N=89)

1.行なったことがある(具体例 ) -

2.行なったことはない   95.9

無回答 4.5

 

問26     貴施設では国の「広域災害救急医療情報システム」運用の訓練を定期的に行っていますか。     (○はひとつだけ)                                 (N=89)

1.行なっている    53.9

2.行なったことはない 41.6

無回答        4.5

 

問27     あなたは国の「広域災害救急医療情報システム」についてどのように評価していますかはひとつだけ)                           (N=89)

1.非常に役に立つと思う       14.6

3.あまり役に立たないと思う     25.8

2.やや役に立つと思う        55.1

4.全く役に立たないと思う       1.1

 

無回答                3.4

 

 

災害対応についてお聞きします

問28     大災害時には、ある病院に患者が集中して、医療活動が十分できないことがあります。こうした事態に対して、あなたはどう思いますか。はいくつでも)                (N=237)

1こうした問題の解決は、消防に任せるしかないのが、現状だと思う          9.7

2自施設の周辺が被災することを、あまり考えたことがないので、どうすればいいか思いつかない  4.2

3災害時に、病院間で確実に連絡できる、ホットラインのようなものを整備するべきだ  56.5

4災害時に、他の病院の受け入れ可能状況がわかる、コンピュータネットワークを整備するべきだ 37.6

5消防がネットワークで集めた、他病院の受け入れ可能状況を、各病院からも見えるようにするべきだ 47.3

6医師会が積極的に情報を収集・伝達するべきだ                18.6

7都道府県の医療部局が積極的に情報を収集・伝達するべきだ          32.9

8日頃から地域内の病院が連携し、収容や転送の計画を立てておくべきだ     58.6

9日頃から他地域の病院と連携し、収容や転送の計画を立てておくべきだ     40.5

10.広く受け入れ可能状況を伝達するために、テレビやラジオを活用するべきだ  24.5

11.その他(具体的に                 )           5.9

無回答                                    4.2

 

29貴施設では、次のような災害対策を行っていますかはそれぞれひとつずつ)     (N=237)

 

行なっている

行なっていない

無回答

1)建物の耐震化

67.1

31.2

1.7

2)ヘリポートの設置

27.0

71.3

1.7

3)医薬品・医療器具の備蓄

70.5

27.4

2.1

4)医薬品・医療器具の供給に関する、業者との協定

46.8

46.0

7.2

5自動起動型の発電機の設置

84.8

13.5

1.7

6)電話交換機は電池を内蔵し、非常電源と接続している

70.9

23.6

5.5

7)コンピュータ(サーバー)の転倒防止

56.5

40.5

3.0

8)防災無線の設置

48.5

48.5

3.0

9災害時優先電話の設置

73.4

24.9

1.7

10災害時優先電話の設置場所の周知

48.9

47.7

3.4

11)衛星携帯電話の設置

22.8

73.4

3.8

12ホットラインの設置(相手先は?       )

38.8

55.7

5.5

13)災害時における医師の参集基準づくり

70.0

26.2

3.8

14)災害時における職員の参集基準づくり

78.5

19.0

2.5

15)災害時の患者転送に関する、他の医療機関との連携体制の確立

23.6

72.6

3.8

 

アンケートは以上です

最後までお答え頂きましてありがとうございました

ご回答は、災害医療の一層の充実のために、

役立ててまいりたいと考えております