1章 情報通信とは   『情報通信と社会心理』 北樹出版 中村功
 
1節 情報通信の定義
 情報化社会とは通信技術と情報処理(コンピュータ)技術の融合およびその発展によってもたらされるものだが、情報通信という言葉はこれを象徴する用語であり、その進展に伴って使われるようになってきた。しかし用語としてはあいまいで、いまだにはっきりした定義はない。実際上はつぎの2つの意味で使われている。
 第一に、情報通信は通信と情報処理が重なり合う部分を指し、通信と情報処理が一体化した中で行われる情報の処理および伝達を意味する。そこでは情報処理と関係のない通信である郵便や、ワープロで原稿を書くとなど通信と関係のない情報処理は除かれる。もともと、この領域を示すものとしては電気通信という言葉が使われていたが、その中でデータ通信など、情報処理関連分野が拡大してきたことに呼応して、情報通信という言葉が使われるようになってきた。したがって、情報通信とは、電信や電話といった従来の電気通信と、インターネットやオンライン・システムなど情報処理と一体化した電気通信をあわせて指す用語である。いいかえれば、情報通信は情報化社会における電気通信のことである、ともいえる。ここでは主にこの意味で使用する。
 他方、単に情報処理と通信の両方を1語で指し示すものとして使われることがあり、そこでは通信で示されるもの全てと、情報処理が意味するもの全てが含まれる。これは「情報通信産業」などの文脈で使われることが多い。たとえば通信白書によると、情報通信産業には郵便から電話、放送、ソフトウエア産業、コンピュータ製造、新聞、出版、研究に至るまで幅広いメディア(産業)が含まれている。
 では電気通信あるいは通信とは何を意味しているのか。図1-1にあるように、そもそも通信とは交通の一部である。交通とは人、物、思想、情報などをある地点から他の地点へ移動させることで、人や物といった有形物の交通である運輸と、思想や情報の交通である通信に分けられる。現在では交通は運輸と同義に使われることが多いが、明治時代にはわが国でも電信や電話は交通の一部とみなされていた。
 このように通信は、人がその意志や知識といった情報を他人に伝えることを意味しているが、音信を通じるとか、信書をやりとりするところから、この言葉が生まれている。この言葉自体は江戸時代の「朝鮮通信使」などに見られるように歴史のある言葉で、より古くは中国唐時代の史書『晋書』などにも記述が見られる。ここでは直接に会って意思を伝達することも通信に入り、英語でいうコミュニケーション(Communication)そのものである。そしてここから、通信は郵便や電信・電話といったメディアを使って情報を伝達することも意味し、今日ではこの意味で使われることが多くなった。なお通信と似た言葉に逓信がある。逓には次々に転送するという意味があり、そこから馬継や郵便を表す駅逓という言葉ができた。この駅逓と電信から一字ずつとって逓信省(郵政省の前身)という名称が作られ(高橋,1986)、郵便と電気通信を指す言葉となった。
 さて、通信は大きくいって郵便、電気通信、その他の3つに分けられる。その他には、のろし、手旗信号、伝書鳩、腕木などを使った歴史的情報伝達が含まれる。電気通信は電気的な手段を使って情報を遠くに送ることを意味しており、英語でいえばTelecommunication(原義的には「遠方とのコミュニケーション」)のことである。日本の   図1-1 情報通信(電気通信)の範囲と日本におけるサービス開始年
 交通 運輸
     通信 郵便
       その他(のろし・手旗信号・伝書鳩・腕木通信など) 
       電気通信
        有線  電信        1869〜              
              電話        1890〜 
             テレックス     1956〜
             ファックス     1973〜       
             有線放送電話    1951〜
             専用線       1906〜     
             データ通信     1964〜 
             パソコン通信    1983〜
             インターネット   1984(商用1993)〜        
             電子メール             
             ISDN        1988〜
             LAN  VAN 
             オフトーク通信   1988〜
        無線  電気通信事業用 
             ポケットベル    1968〜
              携帯電話      1979〜
             PHS        1995〜
             テレターミナル   1989〜
             衛星移動通信    1982〜  
            自営通信用移動通信 
                公共業務用  警察無線、消防無線、気象無線、
                      河川・道路無線
                      防災行政無線     1970〜   
                一般業務   MCA無線      1982〜
                /個人用  タクシー無線     1953〜
                      簡易無線・パーソナル無線 1950〜
                      アマチュア無線   1922〜 
                   VICS(道路交通情報通信システム)   1996〜
       放送   ラジオ       1925〜
            テレビ       1953〜
            CATV      1955〜
            文字放送      1982〜
            BS        1984〜
            CS        1992〜
法律では、電気通信は「有線、無線、その他の電磁的方法により、符号、音響又は影像を送り、伝え、または受けることをいう」(電気通信事業法)などと規定されている。具体的には有線には、電信、固定電話、ファックス、専用線、データ通信、パソコン通信、インターネット、LANなどを使ったコミュニケーションが該当する。一方無線には、携帯電話、PHS、ポケットベル、衛星電話、警察無線・タクシー無線等の各種無線によるコミュニケーションが含まれる。
 また、放送法の規定によると「放送とは、公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう」(放送法)とあり、放送も電気通信に含まれることが多い。確かに電気通信の定義では情報伝達の双方向性については限定がないために、一方通行の放送も電気通信に含まれることになる。しかし、論者によっては通信の双方向性を強調し、電気通信に放送を含まないこともある。
 本書では情報通信を電気通信と同義に使い、電気通信には放送も含めて解釈する。ただその中でも放送を除いた、双方向の電気通信を中心に論じることにする。
 
2節 情報通信の発展
1.情報通信の展開
 わが国の電気通信の歴史は1869年(明治2年)の電信(電報)の開業に始まる。1890年には電話が創業し、それ以後電気通信といえば電信・電話のことを指す時代が長く続いた。電話は需要はあるにも関わらず、その設置に多大の設備と資金が必要であったために常に供給不足の状態であった。供給不足が解消され、申し込めばすぐ電話が設置されるようになったのは、ようやく1978年のことであった。いまでは各家庭にすっかり普及した電話であるが、1960年代後半までは一般家庭にはあまりなく、ほとんどが業務用であった。離れた人との生活上のやりとりはもっぱら手紙か電報に頼っていたのである。創業から100年ほどの間、日本の電気通信の歴史は、まず第一に誰にでも電話という同一のサービスをゆきわたらせること、すなわち「ユニバーサル・サービス」の実現を目指した時代であった。その間、有線放送電話が1951年にはじまったが、これは農村部の各戸に引かれた有線ラジオ放送に電話機をとりつけた簡便な電話サービスで、電話普及の遅れを解消しようとした補助的なものであった。
 ユニバーサル・サービスが完成すると、電気通信は2つの方向で大きく発展する。第一はコンピュータと結びついた情報通信の発達であり、第二は移動体通信の発達である。
 コンピュータ通信は、オンライン・システム等の大型コンピュータ同士をつなぐデータの通信として始まった。たとえばJRの前身である国鉄は1964年から座席予約システム(みどりの窓口)を開始している。電電公社(NTTの前身)が統合的なサービスとしてデータ通信を提供し始めるのは1971年からであった。その後、銀行オンライン、流通業における受発注システム(POS等)、行政機関の窓口業務など、あらゆる分野でデータ通信が利用され、今やデータ通信なしの生活は考えられないまでに大きく発展した。現在データの通信には専用線、パケット交換、ISDNなど様々な通信ネットワークが利用されている。
 コンピュータ通信の中でも最近注目されているのがインターネットによる情報通信であ
る。インターネットはコンピュータ同士の世界規模のネットワークで、TCP/IPという共
 
     図1-1 世界と日本のインターネットホスト数(左軸世界・右軸日本)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                  平成11年度『通信白書』より作成
 
通の通信規約で接続されている。その起源はアメリカ国防省の研究者が1969年に作ったARPAnetというネットワークである。日本では1986年に大学の研究用ネットワーク
であるJUNETが発足したのが始まりで、1993年には商用のネットワークが始まり、以後急速に発達してきた。1993年に2万3千台だったわが国のホスト(IPアドレスを持ったインターネットに接続するコンピュータ)数は、1999年には168万8千台にまで急
 
          図1-2 各メディアの世帯普及率の推移 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
           「消費動向調査」(経済企画庁)による 
     ただしインターネットは「通信利用動向調査」(郵政省)による
 
増した。また1998年の利用人口は推定1694万人に達し、家庭普及率も11.0%になった(『通信白書』)。そして1999年3月現在、世界中で1億6000万人が利用しているといわ
れる。インターネットを利用して電子メールを交換したり、世界中のホームページを簡単に閲覧する事ができ、ネットワーク社会が急速に身近なものとなった。その背景にはパソコンの家庭への普及がある。日本ではワープロ専用機が早くから普及していたこともあり、パソコンの普及率が諸外国に比べて低かった。しかし基本ソフト・ウインドウズ95の発売以降、普及が進み、1999年3月には約3割の家庭にパソコンが普及した(図1-2)。
 またインターネット普及以前に始まったパソコン通信もコンピュータ同士を結ぶデータ通信で、電子メールや、電子会議室、データベースなどの機能がある。インターネットが中心のない網の目のようなネットワークであるのに対して、パソコン通信は中央にホストコンピュータがある放射状のネットワークである。
 ファクシミリはデータではなく、画像情報を伝達する電気通信メディアであるが、近年発展してきたメディアの一つである。日本では1972年に電話回線経由でファクシミリが利用できるようになって以来、企業を中心に普及していった。しかし1990年代に入ると家庭でも使われるようになり、1999年には約1/4の家庭に普及した。
 
           図1-3 移動体通信加入者数の推移
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 一方1990年代に入ると、わが国では移動体通信が急速に発達した。まずポケットベルが若者に普及し、数字の語呂合わせなどを使った情報伝達が流行した。しかし1995年に1000万加入を達成した後、ポケットベルのブームは急速に衰えていった。それにかわって同年以降、携帯電話やPHSなどの移動電話が急速に普及しはじめた。特に携帯電話の普及はめざましく、2000年には5000万加入を突破し、PHSとあわせると移動電話所有者は5500万人を越えた。これは国民のほぼ2人に1人が移動電話を利用していることになる。この爆発的な普及の直接的な原因は端末価格や利用料金の低下であったが、その背景には電電公社民営化(1985年)以降の通信事業者間の競争があった。また普及に伴って、電話機本体による、文字通信などの各種情報サービスや、パソコンと組み合わせたモバイル通信など、高度な移動電話利用も盛んに行われるようになってきた。また衛星を使った電話サービスは1982年に船舶用に始まったが、1999年には低軌道衛星を使った携帯電話サービスが開始された。
 現代では様々な移動体通信が我々の生活を支えている。公共事業用の無線には警察、消防、道路管理などの各業務に必要な無線がある。また防災行政無線は国や自治体が災害時の情報伝達のために整備しているシステムで、1970年から整備が始まった。これには国を中心とした中央防災無線、都道府県防災行政無線、市町村防災行政無線などの各システムがある。行政内部の連絡のほかに、市町村防災行政無線では、住民宅に置かれた個別受信機や屋外のスピーカーを通して住民へ直接情報を伝達することもできる(同報無線)。民間用にはタクシー無線に代表される一般業務/個人用無線があるが、最近ではより効率のよいMCA(multi-channel acces system)無線が発達してきた。これは多数のチャンネルから空いているチャンネルを中継局が自動的に選択して通信する新方式の無線で、多くの利用者が効率的に安定した通信を行える。運輸業、建設業、製造販売業など幅広い分野で使われている。一方テレターミナルはデータ通信のための共同利用の無線である。自動販売機の在庫管理などのテレメータ(遠隔地の測定データを伝送するシステム)やホーム・オートメーションなどの遠隔制御に利用される。そのほか無線を使ったシステムとしてはVICSと呼ばれる道路交通情報システムがある。これは道路を走行する自動車に位置情報や渋滞情報を伝えるシステムで、1996年からサービスが始まった。
 
2.情報通信の問題
 このように発達する情報通信によって我々の生活はより便利になってきたが、その一方で新たな問題も発生している。第一は犯罪への悪用である。一般に犯罪者は新たなメディアをもっとも早く採用する人々である。例えばポケットベルは暴力団にいち早く採用され団員の管理や売春に使われた。また携帯電話は麻薬の売買に盛んに使われている。また最近ではインターネットを利用した毒物の販売や詐欺が問題となっている。第二に、コンピュータに高度に依存した現代社会を脅かす、コンピュータ・ウイルスやハッカーといった新たな犯罪も問題となっている。第三に匿名的なネットワークが生む社会的問題もある。たとえばインターネットを利用してプライバシーが暴露されたり、噂が流されたりすることがある。あるいは電話の伝言サービスは新たな出会いを提供するが、人間関係上のトラブルに巻き込まれることもある。第四に携帯電話の利用がトラブルを生むことがある。運転中の使用が交通事故を助長したり、飛行機や病院の電子機器に悪影響を与えることが懸念されている。また、公共の場での通話に対するマナーも大きな問題となっている。
 
3節 情報通信と社会心理学
1.電気通信に関する諸研究
 さて、このように発展してきた情報通信に対して社会心理学はどのように関わってきたのか。結論から言えば、情報通信の技術的研究に比べて、また似たような分野のマスコミュニケーションの社会心理学と比べても、通信の社会心理学はその歴史・量ともに圧倒的に貧弱である。通信の社会心理学の中でも最も早く着手されたのは電話についての研究であるが、それでも1980年代までは研究はきわめて少なかった。こうした現状をさしてフィールデングとハートレー(Fielding & Hartley,1987)は、電話は研究上「無視されたメディア」であると言ったくらいである。また近年注目されているコンピュータ・コミュニケーションについての研究にしても、機器そのものが普及し始めたところで、研究もようやく蓄積されつつあるといった段階である。
 しかしそうはいっても、詳しくみると、様々な分野で通信の社会心理学に関係する研究がなされている。第一の分野はメディア特性に関する研究である。これは心理学を背景にした研究で、メディアが異なるとそこで行われるコミュニケーションはどのような特徴を帯びるのか、という課題を追求する。電話については1970年代にイギリスで始まった(詳しくは第3章参照)。またコンピュータ・コミュニケーションについてはキースラーやスプロールの研究(たとえばSproul & Kiesler,1992)が有名である。彼らによると、コンピュータ・コミュニケーションでは上下関係の手がかりを読みとりにくいので、平等なコミュニケーションが促進されるが、その一方で状況や相手の立場を思い出させるものが希薄になるために、暴言(フレーミング)など極端な意見が発生しやすく、合意に達しにくいという。池田ら(1997)によれば、電子ネットワーキングの研究はこれまでこうしたメディア特性に関する研究に集中してきたという。
 第二の分野は機器の普及に関する研究である。社会心理学ではロジャース(Rogers)に始まるイノベーション普及研究という分野がある。そこでは新薬、新品種といった新製品からあらたな習慣まで、人々にとって新しいと認識される物事(イノベーション)がどのように広まっていくかが研究されてきた。そしてその延長上で、電話・携帯電話・パソコン・インターネットなどの新たな通信メディアも研究対象になってきた。そこではある通信機器を持っている人と持っていない人の違いは何か、普及を阻害している(または促進している)要因は何か、などが検討されている。
 第三は情報行動論の分野である。情報行動とは、情報を獲得したり、生産したり、送受したり、蓄積したり、処理する人間の行為を意味している。具体的には、人と対話する、電話をする、テレビを見る、文章を書く、電子メールをする、テレビゲームをする、などがこれに該当する。しかし、たとえばもの食べるというときにも(これは食べられるかどうか等)人間は情報処理をしているので、人間行動すべてが情報行動であるといえなくもないが、情報行動論ではメディアや言語をつかった情報行動を主な研究対象としている。特に情報メディアについては、どのような(社会的・心理的・行動的特性をもった)人がどのように(頻度・相手・内容・形式等)利用しているのかが、実証的に研究されてきた。具体的には、利用者に対する質的・量的調査(インタビュー調査やアンケート調査)や、コミュニケーション内容の分析(例えばパソコン通信のログの分析など)が行われる。この研究文脈から、電話やパソコン通信といった電気通信メディアについても、さまざまな調査研究がされてきた(たとえば中村,1997)。
 第四はメディアと社会の関係を考えるメディア社会学の領域がある。ここには多様な研究背景と研究視角が存在しているが、最も有名な研究者としてはマクルーハン(McLuhan)がいる。彼はメディアが変わると人間の感覚が変わり、その結果として社会構造が変化するというメディア史観を唱えた。また逆に、C.マーヴィン(Marvin)に代表されるように、社会の各要因(発明家・投資家・顧客・政府など)がある技術に作用した結果として、技術は初めてメディアとして社会的に成立する、という社会構成主義の立場もある。あるいは、ゴフマン(Goffman)に代表されるようなミクロ社会学を背景として、その場の状況にメディア利用はどのような変化を与えるか、というメイローウィツ(Meyerowitz)のような視角もみられる。吉見らの『メディアとしての電話』(弘文堂、1992年)は、わが国において、メディア社会学が電気通信を中心的にあつかった代表例である。
 第五は人間関係を考察している社会学の各分野において、電気通信が考察されることがある。その中で最も充実しているのは都市社会学の分野である。古くから、電話などの電気通信は遠隔地とのコミュニケーションを促進させ、地域社会の崩壊を加速させるのではないか、という議論があり、地域社会研究と電気通信の関係は密接なものがあった。最近ではウエルマン(Wellman1,1988)らが、日本では大谷(1995)などが、電話を含めた対人コミュニケーションが現代的コミュニティーに果たす役割を、実証的に研究している。またフィッシャー(Fischer,1992)はもともと都市社会学者であるが、都市社会学的課題から、情報行動論、普及学的課題まで幅広く電話について研究している。一方、家族社会学の中では異居近親関係の研究の中で電話コミュニケーションが研究されている。そこでは現代の親族は地理的には分散しつつも関係性を保っているが、そうした関係性において電話コミュニケーションが盛んに行われ、電話はそうした関係を維持することに役立っていることが明らかにされている(例えば関,1980)。あるいはジェンダー論の文脈における電話研究や(例えばRakowら,1993)、若者文化論として、伝言ダイヤルや携帯電話の利用研究も存在している(例えば富田、1997)。
 そして第六に経済学の分野がある。例えば経済史では電気通信が市場経済の成立の果たした役割が考察されている(石井1994、藤井1998など)。また開発経済論の分野では発展途上国において電気通信の果たす役割が検討されている(斉藤ほか1986)。
 
2.通信の社会心理学的課題
 電気通信の社会心理学課題は大きくいって@普及(どのように普及しその促進阻害要因は何か)A利用(どのような人がどのように利用しているか、またその要因は何か)B影響(心理・行動・人間関係にどのような影響をもたらしているか、あるいはどのような役割を果たしているか)の3つに分けられる。普及学は普及を扱い、情報行動論系の研究は利用を主に扱っているが、それらは必ずしも完全な対応関係にはない。例えば経済史の分野も普及を扱っているし、各社会学の分野も利用を扱っており、他の分野もそれぞれの課題を扱っている。通信の社会心理学は各分野がバラバラに通信に関わる部分を扱っているのが現状である。各課題に適切に対処するためにも、また通信の社会心理学を構築するためにも、以上の3課題を中心にして、各分野の研究を整理していくことが今後必要となるであろう。また特に影響に関しては、各社会学の分野などで検討されてはいるが、まだ研究が少ないのが現状である。今後はこの分野での研究の発展が特に期待されるところである。また影響の分野はインパクトばかりでなく、生活に組み込まれたメディアの機能を明らかにする方向で、進化していく必要もある(たとえば中村,2000)。これはメディアの理解と同時に、生活についての理解も促進することとなるであろう。
文献
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石井寛治(1994)『情報・通信の社会史』有斐閣
中村功(1997)「生活状況と通信メディアの利用」水野博介・中村功・是永論・清原慶子著 『情報生活とメディア』北樹出版 81-115頁
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Rakow L.F. & Vija N.(1993)Remote Mothering and the Parallel Shift:Woman Meet the Cellular
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Sproul L. & Kiesler S.(1992) Connections: new ways of working in the networked organization,  MIT Press.(加藤丈夫訳(1993)『コネクションズ 電子ネットワークで変わる社会』ア スキー)
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斉藤優、神品光弘、宝剣純一郎(1986)『発展途上国のコミュニケーション開発』文眞堂
高橋善七(1986)『日本史小百科通信』近藤出版社
富田英典、藤本憲一、岡田朋之、松田美佐、高広伯彦(1997)『ポケベル・ケータイ主義!』 ジャストシステム